『ビジョナリーカンパニー②』(ジェームズ・C・コリンズ)<2回目>(〇)
グロービス経営大学院の企業家リーダーシップの課題図書として読んで以来2回目。やはり良書でした。本書は、転換点から15年間で株式の平均運用実績が市場平均の6.9倍にも達する偉大な企業を調査研究した成果がまとめられています。良い企業から偉大な企業へ発展するため、どの組織的にも適用できる普遍的な時代を超えた答えの追求をテーマとした調査本です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇第五水準のリーダーシップ
飛躍を指導したリーダーは、万時に控えめで、物静かで、内気で、恥ずかしがり屋ですらある。個人としての謙虚さと、食常人としての意志の強さという一見矛盾した組み合わせを特徴としている。
①第一水準:有能な個人
才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする
②第二水準:組織に寄与する個人
組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織の中で他の人たちとうまく協力する
③第三水準:有能な管理者
人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追及する
④第四水準:有能な経営者
明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
⑤第五水準:第五水準の経営者
個人としての謙虚と職業人としての意志の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを維持できる企業をつくり上げる
〇最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人それぞれにふさわしい席に座ってから、どこに向かうべきかを決めている。「人材」が最重要の資産ではない、「適切な人材」ことそが最も重要な資産。
・疑問があれば採用せず、人材を探し続ける
・人を入れ換える必要があることが分かれば行動する
・最高の人材は最高の機会の追求にあて、最大の問題の解決にはあてない
〇厳しい現実を直視する(だが勝利への確信を失わない)
最後には必ず勝てるし、活のだという確信が確固としていなければならない。同時に極めて厳しい現実を直視する確固たる姿勢を持っていなければならない。
・真実に耳を傾ける社風、厳しい事実を直視する社風をつくる。
・上司が意見を聞く機会、そして究極的には真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化をつくり上げている。
〇針鼠の概念(3つの円の中の単純さ)
中核事業で世界一になれないのであれば、中核事業が飛躍の基礎になることは絶対にありえない。3つの円が重なる部分に関する深い理解に基づいて、中核事業に変わる単純な概念を確立するべき。
・狐はたくさんのことを知っているが、針鼠はたった一つ、肝心要の点を知っている。
・3つの円
①自社が世界一になれる部分
②経済的原動力になるもの
③情熱を持って取り組めるもの
・最大の影響を与える一つの「分母」を探し出すべき。企業なら「X当たり利益」
〇規律の文化
規律の文化と起業家の精神を組み合わせれば、偉大な業績を生み出す魔法の妙薬になる。
・規律の文化の2面性。①一貫性のあるシステムを守るひとたち、②自由と責任を与える
・針鼠の概念をねっきょ的ともいえるほど信奉し、3つの円の重なる部分に入らないものであれば、どんな機会でも見送る意思をもつ。
〇促進剤としての技術
技術を変化を起こす主要な手段として使っていない。慎重に選んだ技術の適用に関しては、先駆者になっている。
・その技術が自社の針鼠の概念に直接に適合しているか。3つの円を理解するようになり、業績が飛躍するようになった後に、どの企業の技術の利用で先駆者になっている。
〇弾み車と悪循環
偉大な企業への飛躍は、結果を見ればどれほど劇的なものであっても、一挙に達成されることはない。弾み車を一つの方向に回し続けるのに似ている。ひたすら回し続けていると、少しずつ勢いがついていき、やがて考えられないほど回転は速くなる。
・つねに改善を続け、業績を伸ばし続けている事実に、極めて大きな力があることを知っている。当初はいかに小幅なものであっても、目に見える成果を指摘し、これまでの段階が全体の中でどのような位置を占めているかを示し、全体的な概念が役立つことを示す。このようにして、勢いがついてきたことを確認でき、感じられるようにすれば、熱意を持って参加する人が増えるようになる。
・弾み車効果:針鼠の概念の基づいて前進する⇒目に見える成果があらわれる⇒成果を見て参加者が増える⇒弾み車が勢いを増す
・悪循環:業績への失望⇒理解しないままの反応⇒新たな方針・企画・指導者・式典・流行の追求・買収⇒業績が上がらず勢いがつかない
・全ては第五水準の指導者から始まる。第五水準の指導者は弾み車の方式に自然にひかれる。
冒頭にある「良好は偉大の最大の敵」が印象的。そこそこ良いので現状から抜け出せない。学校も政府も企業もみな「良い」が多いから。偉大であることは良いことがさらに良くなり続け、それが世代を超えて永続していく状態。第五水準、針鼠、弾み車と、独特のキーワードが記憶に残りやすいく、リーダーシップを考えるうえで一度は読んでおきたい一冊でした。