MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

安岡正篤 人間学(神渡良平)

安岡正篤 人間学』(神渡良平)(◯)<2回目>

 昭和を代表する陽明学者であり、東洋思想の大家である安岡正篤さんの著書を研究されていた著者が数多くある安岡正篤さんの著書の中から重要箇所をピックアップして解説された一冊です。すぐに線引きでいっぱいになってしまいました。2回目となる今回は、自分の考え方や行動パターンで意識していることが書かれている箇所(裏づけ)がないかと探しながら読んでみました。1回目は本から学ぼうという本が主でしたが、今回は自分を主にするとどう読めるか。といいつつ、読んでいると引き込まれるところ(自分の思考が刺激されて動き始めるところ)も多く、やはり奥深いなと感じました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯環境が人を作るということに囚われてしまえば、人は単なる物、単なる機械になってしまう。人は環境を作るからして、そこに人間の人間たる所以がある。自由がある。即ち、主体性、創造性がある。だから人物が偉大であればあるほど、立派な環境を作る。人間ができないと環境に支配される。(『知命立命』)

→命は我より作す、と決意した人間は、いかなる逆境も乗り越えて、初期の目的を達成する。志次第で人間は環境を超えることができる。人間は、自分の「人生の主人公」。

 

◯徳慧の学問、即ち広い意味において道徳的学問、人格学、これを総括して「人間学」というならば、この人間学が盛んにならなければ、本当の文化は起こらない。民族も国家も栄えない。(『知命立命』)

→「窮して困(くる)しまず、憂えて意(こころ)衰えず、禍福終始を知って、惑わなざるがためなり」。人間である以上、迷いや心配事、窮することは避けられない。しかし、学問修養を積めば、どうすればどうなるかということがわかってきて、精神的に参ってしまうことはない。こうなってこそ真の主体性が立つ。惑うことができないので自由である。

 

◯「命(めい)」というのは、絶対的、必然性を表し、数学的に言うならば「必然にして十分」という意味を持っている。人間も人生そのものが「命」である。それは絶対的な働きであるけれども、その中には複雑きわまりない因果関係がある。その因果関係を探って法則をつかみ、それを操縦することによって、人間は自主性を高め、クリエイティブになり得る。つまり自分で自分の「命」を生み運んでいくことができるようになる。(『知命立命』)

 

◯人間の生命というものは、全きもの、無限にして永遠なるもの。その偉大な生命がなんらかの機縁によって、たまたま一定の存在になり、一つの形態をとる。我々人間が存在するということは、すでに無限の限定である。無限の有限化であることを知る必要がある。この有限化を常に無限と一致させるということが真理であり、道理であり、道徳的である。(『運命を開く』)

→我々は自分の中に既にある神を顕現させる努力をしなければならない。人間は自分の責任において自己を創造する。だから人間は自己自身を創造するという意味において、神の天地創造の最後の1ページを担当しているとさえ言える。この一点において、人間は他のいかなる存在とも異なり、被造物でありながら創造者(神)の一員に加わる。

 

◯命(めい)を立てる

 だいたいどんな哲学や化学でも、究め尽くしていくと、必ずそこに絶対的、必然的なものがある。これを「天命」という。自然科学はこの天の「命」、すなわち必然的、絶対的なるものを、物の立場から研究、究尽していったもの。哲学は哲学、宗教は宗教、それぞれの立場から天命を追求して、これが天命であるというものをいろいろ立てていく、これが「立命」である。

 

◯天と人間

 宇宙の本体は、絶えざる創造変化活動であり、進行である。その宇宙生命より人間が得たるものを「徳」という。この「徳」の発生する本源が「道」。「道」とはこれなくして宇宙も人生も存在し得ない本質的なものであり、これが人間に発して「徳」となる。その本質は、「常に自己を新しくする」こと。(『人物を創る』)

 

◯人間を磨く3つの学問

 東洋には、「経」「史」「子」「集」という「四部の学」と称するものがある。「子」は独特の観察と感化力をもつ優れた人物の著書のことをいう。従って、「経」に従属させるべきもの。だから、「四部の学」は「三部の学」に集約できる。(『人物を創る』)

・「経」:人間いかにあるべきかを学ぶ。

・「史」:歴史に照らして人間の行動の一切を明らかにし、それによって「かくありしがゆえに、われらはかくあるべからず」と学ぶ。

・「集」:詩文。我々の情操を練っていくもの。ある人物がいかに「経」を解し、「史」を解し、実践していったか。生活原理への工夫体得の過程はその人物が書き残したものに見ることができる。その詩文を集めたものが「集」。

 

◯よりよく生きるための五計

①生計:健康問題。病気をしたり、若死にしない工夫。

②身計:自分の人生をどう生きていくかという問題。

③家計:一家をどういう風に維持していくかという問題。

④老計:いかに老いるかという問題。

⑤死計:いかに死ぬかという問題。

・「少(わか)くして学べば、壮にして為すあり。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば、死して朽ちず。」(『言志四録』)

 

 

 安岡正篤さんはどういう考えの方だったのかということをざっと理解するための一冊でした。多数の著書を出版されている方だけに、まずは総論をという方に向いていると思います。その後は、各論で興味のあるところを深掘りしていきたいです。全冊読破にはかなり時間がかかりそうです。

安岡正篤 人間学 (講談社+α文庫)

安岡正篤 人間学 (講談社+α文庫)

 

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