『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(出雲充)
「あすか会議」(グロービス経営大学院のビジネスカンファレンス)に登壇される、出雲さんの著書を読みました。
東大卒後、三菱東京UFJ銀行入行、1年で退社し、バイオベンチャー企業、(株)ユーグレナ(和名 ミドリムシ)を設立した著者。
本書の魅力は、何といっても、事業を軌道に乗せる大変さ、紆余曲折がとてもリアルに描かれていることです。自然と応援したい気持ちになります。
本書の主役である、生態系の最底辺に属するミドリムシは、植物と動物の間にいる生き物で、植物と動物の両方の栄養素を59種類も作ることができ、食品や化粧品だけでなく、バイオ燃料も得られる優れものです。
(本書で印章に残ったところ)
〇紆余曲折
・ミドリムシを培養する技術の難しさ。仲間、ミドリムシの第一人者(大学教授)との出会い。
・研究室では、月産耳かき1杯。量産するには、ミドリムシを培養するプールの提供者が見つからない‥そして、ようやく石垣島で協力してくれる会社と出会う。
・お金の苦労。そして、堀江貴文さんと出会い、ようやくスポンサーを確保
・いよいよというときに、ライブドアショック。周囲が、手のひらを返したように、取引を拒否。ようやく、出雲さんが自社株をライブドアから買い戻すも、周囲の否定的な反応は変わらず‥。
・社員全員を集め、涙をこらえて賃金カットを伝える。仲間3名が退職することに。この頃、出雲さんは、書店で「上手な会社の潰し方」や「人に迷惑をかけない破産の仕方」などの本を買い求め、暗い気分で読みふけったとのこと。
〇光
・伊藤忠商事が新たに支援を表明。嬉しさと同時に、「これで会社を潰さずに済んだ」という安堵感。自分たちが正しいことをやっていれば、どこかに必ず共感してくれる人がいる。
〇起業家としての想い
・何かを成し遂げたいならば、「やれ!」「人に会え!」「自分の思いを伝えろ!」。必死になるのが恥ずかしいなんて思うことが、ちゃんちゃらおかしい。まずはやってみなければ、動いてみなければ、相手に気持ちが届くはずがない。相手に認められず、ふてくされている暇があるなら、四の五の言わずに、別の人を探して、とにかく一人でも多くの人に会う。ダメだったら、次の人にアポイントを取る。会って、会って、会いまくっていれば、そのうち聞いてくれる人が出てくるはずだ。
(機しくも、今朝、その結果を知ることになろうとは‥スゴイ偶然!)
たまたま、今日の朝刊に、ユーグレナといすゞ自動車が提携して、ミドリムシ燃料でバスを運行させるとの記事がありました。
JX日興日石エネルギーや日立製作所の共同研究への参加、ANAホールディングスの資金支援など、本書発行の2012年12月以降、ミドリムシビジネスへの協力者が現れ、順調に事業が進んでいるようで、良かったと思いました。
しかし、反面、記事によれば、IHIやデンソ―も独自に研究を進めており、米国でがヘリの燃料として利用が始まっているとのこと。
まだ、1リットル500~600円とガソリンに遠く及ばない製造原価。
まだまだ、出雲さんが立ち向かう壁は厚そうです。でも、出雲さんなら、この事業をきっと成功させてくれそうだと本書を読んで感じました。