MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ストーリーで学ぶ戦略思考入門(グロービス経営大学院)

 『ストーリーで学ぶ戦略思考入門』(グロービス経営大学院 執筆:荒木博行)(〇)

 

 大学院の多くの方から、経営戦略を学ぶための良書との話を聞き、気になっていた書籍です。

 経営戦略って範囲が広く、コンパクトにエッセンスを伝えるというのが難しいなぁと感じていました。

 本書は、戦略の考え方や代表的なフレームワークの考え方が「実践で使えること」を意識して整理されており、表現ぶりも平易です。

 評判どおり、経営戦略を勉強する1冊目として、とても分かりやすい内容だと思いました。

 

(本書で印象に残ったところ‥本書より)

フレームワークの基本(3C、5F、バリューチェーン

・3C:企業を取り巻く要因の分析

・5F:業界分析

バリューチェーン:競合企業や自社分析

(3つを組み合わせてみる)

 ①マクロ×買い手:市場

 ②マクロ×売り手:業界

 ③ミクロ×買い手:顧客

 ④ミクロ×売り手:競合企業、自社(バリューチェン)

〇5F

・意味のない5Fとは?

 ①市場定義がぼんやりしている

 ②分析に数字がない

 ③解釈にメリハリがない

・市場定義

①地域や製品を明確に限定して業界範囲を定義する。特に地域軸は、場所によって消費者行動に違いがある場合が多いので、できるだけ細かく見る。

②市場、顧客、業界を分析したうえで、「このビジネスを行ううえではここが大事」という重点ポイント(業界特性)を設定する

・市場規模

①何%伸びているのかを具体的な数値で表す

②市場の定義をどういう切り口で細分化するか(セグメンテーション)。停滞しているようでも切り口が変われば、ユニークな市場になる。

・代替品:PEST分析がカギ。これからの世の中がどう変化するか、顧客の片付けるべき用事は何かを考える。

 

バリューチェーン分析

・企業内部の機能の流れ、つながり方を分析する

・提供する価値を理解することがスタート。自分の組織は顧客のどのような課題を解決しているのか?

・機能や行動に対して、どのくらいのコスト・時間がかかっているのか数値で示す

バリューチェーンの裏に流れるものを理解すること

 企業の中の仕事の場では、①カネ、②情報、③感情が流れている。カネとは違い、情報や感情は組織の壁に非常に弱い。誰が伝えるかによっても変化する。この点を考慮しないバリューチェーン分析は危険(伊丹敬之教授)。

 

〇コストリーダーシップ

・コストの話であり、価格の話ではない(低価格戦略ではない)

①規模の経済:大きくなることによって安くする

(規模の不経済に注意 →キャパオーバー、ばらつき、物流コスト、共通項が少ない、マネジメントの非効率)

 規模が効くのはどの境界までなのか?

②経験曲線:たくさん作って手際を良くして安くする

③範囲の経済:同じものを使いまわすことで安くする

 

〇集中戦略

ナンバーワンよりオンリーワン

・「戦わないことを選択する」という戦い方。

・顧客ニーズではなく「顧客が片づけなければならない用事(仕事や課題)」に着目する

 

〇差別化の論点

①差別化を図るための軸は適切か

 ・どの価値を顧客に訴求するか(売り文句)

 ・売り文句は、顧客にとって重要なことか?

②競合と差があるか(簡単に真似されないか?)

③組織能力を差別化に向けて育てているか

 外へのメッセージを変えるのに比べ、社内は変えにくい。今までやってきたという「慣性の法則」が働くため、かなりの力仕事と時間を要する。逆に言えば、真似されにくい。

 

 経営戦略は受講済みですが、あらためて基本の大切さを学び直しました。

 もし、今から経営戦略を受講するなら、今のところ次の順で読みます。

①本書‥経営戦略って何?

②正しく決める力(三谷宏治)‥決定するにあたって何を考えるべきか

③経営戦略全史(三谷宏治)‥様々なフレームワークに触れて全体をとらえる

④マイケルポーターの競争戦略(ジョアン・マグレッタ)‥真似されない仕組みを考える。①~③はこの本を読むための準備運動。

⑤フォーカス(アルライズ)‥戦略を正す(単なる売上拡大は将来の危険をはらむ)

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