先日読んだ出口治明さんの『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介されており、気になったので読んでみました。グロービスでは、変革のリーダーシップの参考図書にも指定されています。
内容は、フィエンツェ共和国で失脚し、隠遁生活を送っていたマキャヴェッリ(1469~1527年)が外交軍事の実経験と思索の全てを傾けて、君主たるものが権力をいかに維持・伸長すべきかを説いたものです。
その名のとおりの君主論なのですが、君主=経営者、国家=会社、他国=競争相手、民衆=社員、軍隊=営業部隊、訓練=教育などとイメージしてみると、現代でも当てはまる示唆がたくさんあり、リーダーシップ本としても秀逸でした。歴史から学ぶことを体感できます。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇病気の初期において治療は易しく発見は難しい。だが時が進むにつれ、初期の発見が遅れて治療も施さなかったがために、症状の発見は易しくなるが治療は難しくなる。それと同じような事態が政体(支配権)に関しても起こる。
〇なるべく少なく味わうことによって、なるべく少なく傷つけるように、加害行為はまとめて一度になされねばならない。けれども恩恵のほうは少しずつ施すことによってなるべくゆっくりと味わうようにしなければならない。
〇自分の都市の防衛を十分に強化し、臣民に対する措置を講じておくならば、誰でもつねに並大抵のことでは侵略されないであろう。なぜならば、人間は目に見えて困難な企てには常に反対するものであり、堅固な守りの都市を擁してしかも民衆から憎まれていないような人物を攻略するなど容易な業とは目に映らないから。
〇平時にあってこそ、戦時におけるよりもいっそう、訓練に励まねばならない。一つは実践によるもの、もう一つは精神によるもの。実践は、配下の兵士たちをよく統制し訓練させるほか、常に狩猟を行ってこれをとおして身体を労苦に慣らさねばならない。他方で、自然の地形を身に付け、山々がどのように聳え、谷間がどのように開け、平野がどのように横たわり、河川や湿地の状態を熟知してこれに絶大な注意を払わねばならない。このような知識は、その防衛方法をよりよく理解できる。そして、そのような地形の知識と実践を介して、新たに観測することが必要になった別の地形をたやすく理解できる。精神の訓練に関しては、君主は歴史書を読まねばならない。その内に卓越した人物たちの行動を熟考し、戦争の中でどのような方策を採ったのかを見抜き、彼らの勝因と敗因を精査して、後者を回避し全社を模倣できるように努めなければならない。
〇君主たるものは、おのれの臣民の結束と忠誠とを保たせるためならば、冷酷という悪評など意に介してはならない。なぜならば、殺戮と略奪の温床となる無秩序を、過度の慈悲ゆえに、むざむざと放置する者たちよりも、一握りの見せしめの処罰を下すだけで、彼のほうがはるかに慈悲深い存在になるのだから。無秩序は往々にして住民全体を損なうが、君主によって実施された処断は一部の個人を害するのがつねであるから。
戦争が絶えない時代背景だけに、ここでは記載しづらいような厳しい記載もたくさんありました。
「トップに立つものが、何をどう判断すべきか」、一個人として情に流されることなく、トップという立場にある人が下さねばならない判断軸をビシッと伝えている点がとても学びになりました。
内容も頭に入りやすく、ボリュームも本文は200ページくらい(残り200ページは訳注)なので、とても読みやすい書籍でした。