MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

カップヌードルをぶっつぶせ!(安藤宏基)

 『カップヌードルをぶっつぶせ!』(安藤宏基)(〇)

 日清食品2代目社長の著書です。強烈な個性の父親を後継する2代目社長、カップヌードルに勝つ商品開発・マーケティング、の両面から書かれており、泥臭い内容でリアル感たっぷり。

 安藤社長が開発された商品には、「日清やきそばUFO」「どん兵衛きつね」「ラ王」「Spa王」等、私もお世話になったブランドがずらり。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇社内改革への思い

 37歳で社長に就任した著者。

 そのころの社内は、創業27年が経過し、①セクショナリズム・官僚主義、②決裁書にはハンコが10個も20個も並ぶ、③責任は取らないが権限は取る管理職、④上からの指示がないと動けない社員(トップダウンの風潮)。

 カップヌードルが売上の過半を占め、利益のほとんどを稼いでいたため、「甘えの構造」が出来上がっていた。これを打破したいという強い思いがあった。

 

〇創業者と2代目の確執とは、異能と凡能のせめぎあい

 独創から事業を興した創業者は普通の人間ではない。しかし、後継者はだいたいが普通の人。創業者には時間がない。2代目にはたっぷり時間がある。この時間感覚の違いがかみ合わない原因。

 創業者(父親)は90歳を過ぎても枕元に赤鉛筆とメモ用紙を置く習慣は変わらなかった。常識を超えた発想を手掛かりにして執念で新商品を発明。著者が創業者から学んだ一番大きい教訓はこの「執念」。

 

〇新商品失敗時の撤退(創業者)

 カップヌードルにヒントを得たライス事業からの早々に撤退。古米を利用してほしいという政府からの要請を消費者ニーズと勘違いしたことが失敗の要因。「事業はすべて進むより引くほうが難しい。撤退時期を逸したら、あとは泥沼でもがくしかない」とは先代社長の言葉。

 

〇UFOの成功で掴んだマーケティングノウハウ

 インスタントラーメンのような薄利多売をせざるを得ない大衆的商品は、発売と同時に一気にブランド認知を図らないと生き残れない。ハイインパクト型の宣伝とプレミアムキャンペーンなどによる購買促進策が重要になる。

 

〇新製品の売上予測モデル「ATRモデル」

 商品認知率×トライアル購入率×リピート購入率=売上予測

①商品認知率(Awareness:宣伝部長責任)

 ・CMクリエイティブ、総視聴率、メディアミックス‥

②トライアル購入率(Trial:営業部長責任)

 ・業態別取扱い率、店頭価格設定、量販店(チラシ、大量陳列)、コンビニ(棚のフェイシング、ポジショニング)‥

③リピート購入率(Repeat:ブランドマネジャー、開発部長、生産部長責任)

 ・商品設計内容(コンセプト)、技術開発力、品質問題

 

 事業承継、終わりのない新商品開発‥ ヒット商品を出し続ける企業の社長であれば、成功美談が書かれているのかと思いきや、泥臭い部分が垣間見れて、これがとても学びになりました。栄光の裏側の苦労や地道な取り組みは学びの宝庫であると思いました。

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