MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ラッセル 幸福論(訳者:安藤貞雄)<教養>

 『ラッセル 幸福論』(訳者:安藤貞雄)<教養>

 岩波文庫は苦手意識がありますが、この本は読みやすかったです。

 ラッセル(1872~1970)が1930年に発表した作品で、著者曰く、「現在不幸な多くの人々も、周到な努力によれば幸福になり得るという信念に基づいて本書を書いた」とのこと。

 前半戦(1~9章)は「不幸の原因」、後半戦(10~17章)は「幸福をもたらすもの」について書かれています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

《不幸の原因》

〇【3章(競争)】人々が生存競争という言葉で意味しているのは、実は成功のための競争。人々が怖れているのは、明日の朝食にありつけられないのではないかということではなくて、隣近所の人たちを追い越すことができないのではないかということ。

〇【4章(退屈と興奮)】退屈の反対は快楽ではなく興奮。問題は興奮の分量。少なすぎれば病的な渇望を生むし、多すぎれば疲労を生む。

〇【5章(疲れ)】純粋に肉体的な疲れは、過度でなければどちらかというと幸福の原因になりがち。現代生活では、重要な疲れの種類は常に情緒的。情緒的疲れのやっかいな点は、休息を妨げること。

〇【6章(ねたみ)】とりわけ疲れが実にしばしばねたみの原因になる。人はしなければならない仕事をする力が自分にはないと感じたとき、漠然とした不満をおぼえる。

〇【7章(罪の意識)】罪の意識はよい人生の源泉になるどころか、全くその逆。罪の意識は人を不幸にし、劣等感を抱かせる。自分が不幸なので他人に対し過大な要求をしがちであり、ために、人間関係において幸福をenjoyすることができなくなる。

〇【8章(被害妄想)】私達は、他の人間と違って欠点などない、と友人たちが思ってくれるものと期待している。私たちに欠点があることをやむを得ず認めた場合、私たちは、この明白な事実をあまりにも深刻に考えすぎる。何人も完全であることを期待すべきではないし、また、完全でないからといって不当に悩むべきではない。被害妄想はいつも、おのれの美点をあまりに誇大視するところに原因がある。

〇【9章(世評に対するおびえ)】概して、飢えを避け、投獄されないために必要な限りで世論を尊重しなければならないが、この一線を越えて世論に耳を傾けるのは、自ら進んで不必要な暴力に屈することであり、あらゆる形で幸福を邪魔されることになる。

《幸福をもたらすもの》

〇【11章(熱意)】人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。ただし、ある種の枠の中(健康、人並みの能力があること、必需品が変えるだけの収入、妻子への義務といった最も基本的な社会的な義務など)に納まっていなければならない。

〇【12章(愛情)】熱意の欠如の主な原因の一つは、自分は愛されていないという感情である。反対に愛されているという感情は、ほかの何ものにもまして熱意を促進する。

〇【13章(家族)】家族が与えられるはずの根本的な満足を与えられなくなっていることが、現在、一般的に見出される不満の最も根深い原因の一つである。

〇【14章(仕事)】量が過多でない限り、どんなに退屈な仕事でさえ、たいていの人々にとっては無為ほどに苦痛ではない。仕事をしていれば、休日になったときにそれがずっと楽しいものになる。

〇【15章(私信のない興味)】仕事以外の興味をたくさん持っていれば、持っていない場合よりも仕事を忘れるべき時に忘れることが断然やさしくなる。肝心なことは、こういう興味は、一日の仕事で使い果たしてしまった当の能力を使うものであってはならない。

〇【16章(努力とあきらめ)】あきらめには2種類ある。一つは絶望に根差し、一つは不屈の希望に根差す。心配、やきもき、いらいらする感情に打ち勝つには、根本的なあきらめによるほか道がないのではないか。心配の帝国から解放された人は、以前、絶えずイライラしていた頃よりも、生活が格段に楽しいものになったことを発見するだろう。

 

  本書では、幸福論は心の持ちよう、考え方次第というところが根本にあり、だからこそ、変えることができると主張しているのだと思いました。このあと、アランの『幸福論』が控えており、同じ幸福をテーマにしていてもアプローチがどのように異なるのか楽しみです。

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