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MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

レゴはなぜ世界で愛され続けているのか(デビット・C・ロバートソン、ビル・ブリーン)

 レゴはなぜ世界で愛され続けているのか(デビット・C・ロバートソン、ビル・ブリーン)(〇)

 

 マーケティングⅡで学んだ「顧客接点」を具体的な事例で復習するために読んでみました。LEGOブロックでお馴染みのレゴの①成長過程、②2003年に3億ドルの赤字に陥り倒産の危機に瀕する過程、③そこから復活を遂げた改革過程、が関係者への取材をもとにまとめられています。

 マーケティングの観点だけでなく、経営戦略、組織論、事業再生の観点などを包括する好事例であり、MBA生にお勧めの良書だと思います。

 

 ストーリーの幹は、以下のとおりです。

①開発者の高い専門能力で企業を成長させたが、顧客の声を聞かない開発者中心の社内文化ができてしまう。

②90年代に入って、ゲームソフトやインターネットゲームの普及で売上が頭打ちになる中、売上を増やすべく新製品開発を行うが、顧客ニーズとずれていく。開発も非効率になり、業績が悪化。

③社内文化を変革し、顧客とともに新製品開発を開発する手法や開発の効率化に取り組む。

 特に、経営陣や開発者が何を思い、顧客のことをどのように考え商品開発に取り組んだのか、凋落時と復活時の考え方の違いがリアルに描かれています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)→多数あるのため一部抜粋

〇創業~成長過程

・創業直後から絶えず新しいことを試していた。実際に役立つかどうか分からない新技術に大金を投じることもあった。

・「イノベーションはつねに数がものをいう。数が多いほど、大きな見返りを得られる可能性は高まる」

・傑作の数々はすべてブロックという枠内で生み出されている。事業の範囲をはっきり定めることで、デザイナーたちにブロックを使った創造という枠の中で世界屈指の能力を身に付けさせた。

・優先順位の最上位は子供たちではなく、小売店に置く。

 

〇業績悪化過程(90年代に売上の伸びが頭打ち~2003年大幅赤字)

・93~02年の10年間、98年を除き毎年黒字だったが、EVAは16億ドルの損失

・好業績が続いたので、各製品の生産コストが正確に把握されていない

・90年代後半には主要な購買層の大半がインタラクティブなゲームや子供向けゲームソフトに夢中になっていった

スターウォーズやハリーパッターなどの流行に依存し、長期間売れてきた基本商品の販売が疎かになっていた

・製品ラインアップが急拡大する中で「最高のものを」というレゴの理念が疎かになった

・経営陣がまるで機能しかった。社内のどの部門も権限の範囲ははっきりしているが、責任の範囲はあいまい。製品在庫が正確に把握できず、財務予測が立てられない。

・急速な世界進出に必要なイノベーションが欠けていた

 

〇復活過程

・「3つの負けられない戦い」に的を絞った

 ①パーツ数・開発期間の半減、②小売店を第一に考える、③レゴランドなど施設売却によるキャッシュの確保、+α:明確に方向性を定めてビジネスのやり方を変える

・13.5%の売上総利益率という製品の共通目標

イノベーションマトリックスの作成と開発手順の見直し

・従業員の1/3の解雇

・やみくもな新製品開発の中止。ブロックへの回帰。

・一定の枠の中で創造力を発揮しようとする(少ないものでより良いものをつくる)文化の復活

 「レゴファクトリー」:クラウドソーシングによる新製品シリーズ

・「自分たちのブランドに何ができるかを知りたければ、ブランドの最も大切な顧客に尋ねればいい」

①「アンバサダープログラム」:世界30カ国のユーザーグループの代表から質問・要望を聞く

②「キッズ・インナー・サークル」:世界2000人の子どもたちに、おもちゃの評価委員会を務めてもらう

③「コア・グラビティー」:最大のファンを見つけるための顧客調査→組み立て玩具に関心のない大多数の子供のことは一切忘れることにした

 

イノベーション戦略の「7つの心理」‥組み合わせる

①創造性と多様性に富んだ人材を揃える

(凋落時‥レゴの場合)

・勤続20~30年の開発部隊の考え方が内向きになり、自分たちの作るものは何でも売れると信じていた

・ニーズにあった人材が採用されていない

・新規採用者にレゴのDNAが共有されていない

・デザイナーとサテライトチームの間の組織の壁

ブルーオーシャン市場に進出する

③顧客主導型になる

(凋落時‥レゴの場合)

・ブロック好きの少数派の子供たちの間で人気№1になるよりも、ブロックに興味のない多数派の子どもたちから指示を得ることに重点が置かれた。

④破壊的イノベーションを試みる

(凋落時‥レゴの場合)

・あまりに多くのことをあまりに急いで行おうとした→自社のアイデンティティを捨てていた

⑤オープンイノベーションを推し進める‥群衆の知恵に耳を傾ける

(凋落時‥レゴの場合)

・顧客は消費者としかみなさず、製品開発の協力者にはしない頑固さ。

⑥全方位のイノベーションを探る

イノベーション文化を築く

 

 勉強材料として、また読み直してまとめてみたいと思わせてくれる内容の濃さでした。マーケティングだけでなく、経営戦略、オペレーション、人・組織の問題など、包括的に経営を考えるという意味では、企業の事例を学ぶのが良いと思いますが、本書は、まさにそれに適した書籍でした。 

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