『コトづくりのちから』(常盤文克)
著者は、花王の元社長・会長を歴任された方で、姉妹書籍『モノづくりのちから』とあわせて、テクノロジー企業経営の参考図書です。
同じ仕事をしていても、どんな世界を描いて仕事をしているのかによって心の持ち方がまったく異なる。
レンガを積んでいる職人に「何をしているのか?」と尋ねると、ある職人は、「レンガを積んでいます」、別の職人は、「家を造っています」、また別の職人は「新しい街を造っているんです」と‥。
人はお金や地位よりも自分の内面から湧き出るエネルギーを感じるとき、一番やる気が高まり、仕事にやりがいを感じる。このエネルギーを引き出し、組織の力とする、集団の力を飛躍的に引き上げていくマネジメント(=コトづくり)について、書かれています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇個は全体に育てられ、育てられた個が全体を強くする。”コト”を起こし、その中で個と全体が響き合い、一つになったとき、その集団からよきモノ、よきサービスが生まれる。
〇コトづくりへの目覚め‥マネジメントの仕事とは、界面のような高い壁をできるだけ低くし、それぞれの研究グループや研究員の異質な知の交流ができるような仕組みを作ることではないかと思い至った。
〇「よきモノづくり=技術×コトづくり」
技術だけでは良いものはできない。人を心から燃えさせるコトづくりが基盤になければならない。
〇「コトはモノをモノたらしめる基礎」
〇コトには、「言」(経営者の言動、価値観、目標、夢、志、ロマン‥)と「事」(仕組み、仕掛け、システム、組織、活動、環境‥)の2つがある。
→何よりも経営トップが夢を語り、常に高い目標を掲げ、その実現のために全員を巻き込んで、社員の能力を極限まで引き出すリーダーシップが必要。
〇モノは原理・法則・不変、コトは非原理・一回性・可変
〇(アップルストアにて‥)顧客だけでなく社員も一緒になって仕事を楽しむ。これこそ、川下のコトづくりではないかと、目からウロコが落ちる思いだった。真の顧客満足は同時に社員満足であって、両社が響き合っていないと本物の顧客満足ではない。
〇コストと効率を追求するあまり、現場から将来の夢を語り合うような「人の温もり」が消えてしまうとしたら、元も子もなくなってしまう。
人が仕事に喜びを感じるのは、単にお金のためだけでなく、考えたり、工夫したりする「創造の喜び」、そして、つくったモノが社会に役立ち、人々に喜んでもらえるという「社会的な喜び」を実現するときだと考えている。
「コストと効率で現場から人の温もりが消えてしまう‥」という最後の言葉は、年々実感が増しているような気がします。
それも仕事なので、ある程度仕方のないことだとは思いますが、そんな中でも、どうやったら、やる気を引き出せて、仕事を楽しむことができるのか?を考えたいものですね。
それを忘れてしまっては、労働machineになってしまいます‥。
働くうえで大事なことを思い返させてもらった一冊でした。