『経営を見る眼』(伊丹敬之)(〇)
人・組織・カネ・リーダー・戦略‥。経営者が考えるべき全体像を体系的にまとめた書籍です。経営の勉強のスタートとして何を学べばよいかと考えながら読んだり、ある程度勉強した段階で、自分の視点の抜け漏れを確認しながら読んだりと、いろんな使い方ができる一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇人はなぜ動くか(第1章)
経済組織体への「参加」と職場共同体への「所属」という2面性から考える
〇仕事の場で何が起きているか(第2章)
協働の意欲を湧き立たせ、協働しやすい状況づくり、条件づくりをするのがマネジメントの仕事
〇雇用関係を断つとき(第3章)
①陳謝と感謝、②過分なほどの補償、③痛みを分かち合う
〇企業は何をしている存在か(第4章)
社会への製品・サービスの提供の中核は、技術的変換。
〇利益とは何か(第6章)
社会へのお役立ち料であり、社会からのお布施であると考えると、赤字を出すことは社会に役立っていないことを意味する。
〇企業は誰ものものか(第7章)
企業という経済組織体の運命を左右する権力を誰が持つのか、それが問いの本当の中身
〇人を動かす(第8章)
「大勢の他人に自分が望ましいと思う何事かをしてもらうこと」(宮大工)
〇リーダーの条件(第9章)
正当性と信頼感。
〇上司をマネジメントする(第11章)
「中間管理職は土管管理職になるな」。土管とは、上から下へ、何でも詰まらずにスムーズに流すパイプ。
〇経営をマクロに考える(第12章)
経営とは、他人を通して事をなすこと。人を動かすことが経営の本質。
①直接率いる(刺激する、束ねる)
②全体的に枠をつくる
・事業の枠→戦略
・仕事の基盤の枠(仕組みの枠→「経営システム」、プロセスの枠→「場」)
・人がらみの枠(人の枠→「人事」、思考の枠→「経営理念」)
〇戦略とは何か(第13章)
ボトムアップの戦略作成はありえない。アイデアの源泉の一つがボトムアップにあることは望ましいのは当然であるが、戦略の最終設計はあくまで頂点部分の仕事。だからこそ、組織の長の見識・哲学が問われている。
〇競争優位の戦略(第14章)
「4つの顧客価値」に対する「4つの差別化の武器」
①製品差別化、②価格差別化、③サービス差別化、④ブランド差別化
〇管理システム(第18章)
業績測定システムとして、普遍的な重要性をもつのが、管理会計
〇場のマネジメント(第19章)
「場」とは、人がそこに参加し、意識・無意識のうちに相互に観察し、コミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺激をする、そのプロセスの枠組みのこと
〇キーワードで考える(第20章)
「当たり前スタンダード」「神は細部に宿る」「人は性善なれども弱し」「六割」「目に見えないことこそ重要」
〇経営の論理と方程式で考える(第21章)
目に見えないものを見るとは、論理の力で目に見えないものを生き生きと想像すること。
・「経営の三つの基本論理」:カネの論理、情報の論理、感情の論理
・「経営の方程式」:具体策=環境×原理
・「経営のゆれ動き」:揺れ動くのがふつう。揺れ動きこそ常態、最適というダイナミックな見方が、経営を見る眼としては必要
経営の勉強をしたい。でも、やってみると、盛りだくさんすぎる。学んでいることがつながらず、全体像すら見えてこない。時間だけが過ぎていく‥。
だけど、ある程度、学ぶべき項目が一周すると、全体が見えてきて、ぐっと楽になってくる。吸収力も飛躍的に高まっていく。