『孫正義奇跡のプレゼン』(三木雄信)(〇)
ビジネスプレゼンテーションの参考として読んでみました。
孫社長のプレゼンテーションをしっかりと見たのは、ソフトバンクアカデミアの公開講義です(http://www.softbank.jp/academia/)。話し方もスライドも素晴らしく、2時間以上の講義があっという間で、「もっと聞いてみたい」という感銘を受けたことが、本書を読むきっかけになりました。
本書は、ソフトバンクの元社長室長が孫社長のプレゼンの準備~実践まで、その裏側を解説された内容です。
また、本題からそれますが、途中、6ページにわたり、「『孫正義×堀義人(グロービス経営大学院の堀学長)』トコトン議論~日本のエネルギー政策を考える~」(2011年)という記事があり、堀さんのスゴさも認識しました。
(印象に残ったところ‥本書より)
【準備・心構え】
〇プレゼンテーションする人が「主」で、スライドは「従」
〇プレゼンテーションの準備。最初にやることは、自分のプレゼンテーションの1スライドあたりの標準時間を知ること(一般的には3分程度)
〇論理よりもまず感情を刺激するべき
〇切れのあるプレゼンテーションのためには、最も重要な「メッセージ」を抽出してそれを短文で言えるように訓練しておくこと
【スライド】
〇プレゼン全体の「メッセージ」がシンプルで骨太であること
1枚のスライドにつき、短文のメッセージ(10~20字)とグラフや図・写真1枚というのが標準的。1スライドあたり、1メッセージ、1イメージ。
〇ビジネス上で起きるすべての事柄に数字の裏付けを求める
可能な限り、スライドの「メッセージ」を示す数字を入れる。数字は「比較して」初めて意味が出てくる。数字の「傾向」で未来を予想することは、孫社長の経営手法の根幹を成している。
〇数字を誰もが分かる見やすいグラフに変えて、その数字の意味を誰もがわかる例や比較で説明する。
〇グラフは、軸、目盛り線、枠線は省き、見やすくする。
【プレゼン・質疑応答】
〇メモなしのプレゼンテーション
プレゼンテーションのスライドを作る過程で何度も社長室経営戦略担当を相手にディスカッションをしているので、どう説明するか事前に十分わかっている。だからリハーサルはしない。ホワイトボードで議論する際は、文字を細かく書いて(薄い3㎝前後の罫線マスに1文字くらい)1枚のホワイトボードに書き込む情報量を最大化する。
〇「愛嬌」や「笑い」のミックス
例えば、2007年総務省の公開カンファレンスにて‥「誰が日本のブロードバンドを世界一安く速くしたのか? 誰がこの分野で『毛が抜ける』ほど頑張ったのか?」
〇質疑応答のコツ
・質問の意図が理解しずらい場合は、自分の口で質問を整理して、質問者に確認すること
・そもそも、プレゼンテーション案を作成する段階から、徹底的にその1枚のスライドの背後にある様々な論理を考え抜いておくこと
【その他】
〇キャズムを超えるために、「行動」や「集団」を利用する
「他の人が実際に便利に使っている」ことを重視するアーリーマジョリティには「こんな製品がありますよ。先に使っている人がかなりいますよ。ぜひ使い心地を聞いてみてください」というメッセージ協力に伝える戦略として、「行列」や「集団を作った」。iPhone3G発売時に表参道のショップに並んだイノベーターの行列に孫社長が現れ、最終的に1500人の列に膨らんだという模様がブログ、ネットニュースで流れた。
プレゼンは、する機会も聞く機会もありますが、自分で何度やっても完璧ということはなく、むしろ反省材料が目につきます。
繰り返し経験して、最後は身体で覚えるしかないでしょうが、その繰り返しの仕方を賢く効率的にやるために、優れたプレゼンを見たうえで、その背景にある、その方なりの考え方を知ることは、机上でも学べる有効な手段であると感じました。