『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(グロービス経営大学院)(〇)
日本は長寿企業大国で、200年以上の長寿企業は1191社(2013年)あり世界の43%でトップ。300年企業は605社、500年以上は39社、1000年以上は7社。
本書は、インタビュー取材を中心に、長寿経営の秘訣に迫る内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるものでもない。唯一生き残るは、変化できる者である」(チャールズ・ダーウィン)
〇日本型サスティナブル企業の3つのポイント
①事業の変化(コア能力と価値観に沿った「顧客価値」を提供する)
・コア能力:時代を超えて通用する本質的な独自の強み
・顧客価値:コア能力をベースに新しい顧客価値を生み出す力
・組織能力:コア能力を磨き続ける力
②時代の変化(平時も有事も継続のための「身の丈経営」にこだわる)
・経営スタイル
【平時】浮利を追わず、コア能力をベースに質素倹約な経営。チャレンジするが致命的なリスクは負わない
【有事】コア能力に沿った大胆な意思決定(変わる判断、変わらない判断)
・ガバナンス
・資本・財務体質:自己資本の充実、売掛金の分散。レバレッジ効果は財務リスクが高まる。”すべての卵を同じバスケットに盛るな”
③世代の変化(サスティナブル企業を支える「価値感」をつなぐ)
⇒社長、後継者、社員。
・経営理念や行動規範が必要とされ、創られるのは、「価値観が伝わりにくくなったとき」
・創業の志、価値観、理念というものは、企業のDNAであり、幾多の変化を乗り越えるための羅針盤であり、行動指針になるもの
〇長寿に適した土俵選び(2軸で考える)
・「商品・サービス本質的機能の変化の度合い」(大きい・小さい)
・本質的機能の変化のスピード(遅い・早い)
〇「逸話のマネジメント」
経営理念を言葉として記憶するのではなく、理念に基づいた決断や行動の「ノンフィクション物語」として取り扱うこと
日本がこんなに長寿企業大国だとは知りませんでした。時代を超え、世代を超え、企業が存続するというのは、それだけその企業が社会から必要とされてきたということ。冒頭のダーウィンの言葉が刺さります。
そうした長寿企業の社長というのは、どれだけ過去の重圧を感じているのだろう?そして、目の前の経営努力をしつつも、その視点は、どこまで遠い先を見据えているのだろう?経営者の感覚がとても気になる一冊でした。