人材マネジメントの佐藤講師の著書です。前回は、人材マネジメントを受講した際に読みましたが、今回は、テクノロジー企業経営の受講時に、研究開発マネジメントの観点に着目して読んでみました。
本書は、3Mやセイコーエプソンの事例をもとに、イノベーションを誘発する組織マネジメントの観点について書かれているので、ヒト系科目に限らず、技術経営の観点からも役立つ一冊でした。
今回は、3Mの事例が特に参考になったので、そこを中心にまとめてみます。
(3Mの事例は、OBH(組織行動とリーダーシップ)のケースにも取り上げられているので、ケース後に読んでも参考になると思います)
【3Mの事例】(本書より)
〇イノベーションを誘発する取り組み
①仕事の15%の時間を会社として与えた職務以外のことに使っても良い。
②ブートレッギング(密造酒づくり)
正しいと信じた場合上司の指示に反してもその仕事を続けることができるという文化
③経営目標として「過去1年間で販売した新製品売上高が総売上高の10%以上を占める」、「過去4年間で発売した新製品の売上高が総売上高の40%以上を占める」ことを掲げている。
→以上の取り組みにより、社員のアイデアを尊重することが徹底された。たとえトップマネジメントでも明確な証拠によらなければ、社員のアイデアを否定できないという不文律ができた。マネジメントはアイデアが具現化できるようにスポンサーシップを発揮することが求められる。マネジメントは集中的に支援すること。この考え方をもとに、アイデアが実際に製品化されるまでの過程を管理するシステムができた。
〇全員参加型の協働システムを機能させるには、そのシステムのダイナミズムを殺さないこと。アイデアは次のアイデアが誕生する契機となる。この連鎖を途切れなくさせることがマネジメントの課題となる。
→一人ひとりの自律性を育み、尊重することが何よりも必要。多くのマネジメントは個々の自律的行動よりも組織全体としての統一性を重視する傾向があり、トップマネジメントの意図のもとに行動することを期待する。ここを乗り越えることが難しい。
「イノベーションをコントロールしたい、しかし完全にはできない。それでは、マネジメントは何をすべきか?」
本書で提起された、この問題意識を持つことによって興味を持って読み進めることができました。
「コントロールしたいけど思うようにできないこと」というのは、研究開発分野に限ったことではなく、様々な場面で生じる問題ですね。そのときにどう考えるか?無理やりにでもコントロールすることを考えるのか?別の観点で考え直すのか?
何を、どのように、どこまでコントロールすべきかを問い直すプロセスによって個人差(個性)、企業の特色が生まれてくると思います。答えのない世界であるがゆえに、「自分はどうしたいか」という意思と価値観が問われる問題に行きつくのだと思いました。