『コーポレートファイナンス第10版(上・下)』(リチャード・ブリーリー他)(〇)
大学院では、カネ系の応用展開科目はすべて受講したいと思っており、ファイナンスⅡの受講を契機に、覚悟を決めて本書を読むことにしました。
約1500ページの長丁場。確かに長いですが、コーポレートファイナンスの理論について、広く丁寧に書かれており、翻訳も比較的分かりやすいと思います。
ただし、読むタイミングとしては、ある程度ファイナンスの勉強が進み、ファイナンスⅡ・Ⅲ、ファイナンシャル・リオーガニゼーション(FRO)などを受講するあたりの段階が良いと思います(他の科目の書籍が読めない・・というトレードオフが生じます)。レベルは高いです。
(主な論点‥本書より)
〇結局、何を学ぶのか(ファイナンス理論の7つの考え方)
①「純現在価値」(NPV、IRR)
・今日の1ドルは明日の1ドルよりも価値があり、安全なドルはリスクのあるドルよりも価値が大きい
・株主は経営者に「純現在価値を最大化せよ」という一つの簡潔な指示を与えればよい
②「資本資産価格モデル」(CAPM、β)
・リスクには、分散可能なリスクとそうでないリスクがある。人が気にかけるのは、取り除くことができないリスク。
③効率的な資本市場
・証券の価格は利用可能な情報を正確に反映し、新しい情報が入ってくればただちにこれに反応する。
④価値の加法性と価値保存の原則
・価値の加法性の原理:全体の価値は部分の価値に等しい
(プロジェクトAとBの現在価値の合計は、これらを組み合わせたプロジェクトABの現在価値に等しい)
⑤資本構成の理論(MM理論)
・完全な市場においては、資本構成の変更は、企業の価値に影響しない
(資本構成によって企業の資産から生み出される全体のキャッシュフローが変わるということでない限り、企業の価値は資本構成から独立である)
⑥オプション理論(ブラック=ショールズの公式)
・オプション:現在取り決められる一定の条件で将来取引できる機会
・関連する変数:オプションの行使価格×原資産のリスク×金利
⑦エージェンシー理論
・経営者、従業員、株主、社債保有者などの関係者は共通の価値に向けて行動すると仮定していたが、利害の対立があり、この問題に対処するために企業は様々な行動を取っている。
これだけでは難しいので、自分の言葉でもうちょっと簡単に言い換えると、
①「企業価値の算定方法」を学ぶ
②「リスク(リターン)の考え方」を学ぶ
③「投資判断」を学ぶ
④「資本構成の考え方」を学ぶ
⑤「資金調達方法」を学ぶ
⑥「アカウンティングとの接点(財務)」を学ぶ
〇ファイナンスの10の未解決論点(‥難しいので備忘のため)
①プロジェクとリスクと現在価値を決めるものは何か
②リスクとリターン:見逃している者は何か
③効率的市場理論の例外と考えられる事例はどのくらい重要か
④経営陣はオフバランスの負債か
⑤新しい証券や新しい市場の成功をどのくらい説明できているか
⑥利益還元政策論争はどこまで解決できるか
⑦企業が負うべきリスクは何か
⑧流動性の価値とは何か
⑨合併ブームをどのくらい説明できているか
⑩ 金融システムが危機に陥りやすいのはなぜか
やっと読み終わった~!と、一息つくも、理解できるかと言えば、いえいえ(^^;
「聞いたことはあります」程度で、「質問しないで(*_*;」というレベルです・・。
「人に説明できる」レベルに至るには、事例に取り組んで調べながら理解する地道なプロセスを繰り返すしかなさそうです。
他方、全体像が分からないまま、いきなり事例に取り組んでも、「そもそも何をしようとしているのか分からない」、「論点を見過ごす(気づかない)」という事態に陥ってしまいます。ファイナンス理論の守備範囲(全貌)を見渡すことは、カネ系を深く学ぶなら、一度は乗り越えなければならない壁であると思います。
今回は、年末年始休暇もフルに利用して取り組んで、約3週間。。。
なかなか高い壁で、下巻冒頭のオプション理論は心が折れそうでしたが、壁の上から全貌が見渡せる視野が備わったことは、今後、各論を理解していく際の支えになると思います(あ~疲れた)。
- 作者: リチャード・A・ブリーリー,スチュワート・C・マイヤーズ,フランクリン・アレン,藤井眞理子,國枝繁樹
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 単行本
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