大塚さんと杉戸さんのお薦め書籍だけあり、これは良書でした。
サブタイトルに『経済は「感情」で動いている』とありますが、人は理屈だけで動いているわけではなく、感情や感覚で動いている部分もかなりあり、決して論理的な生き物ではないことが本書を読むと分かります。
裏付けとなる多くの実験結果がまとめられており、マーケティング施策を考える際にも、とても参考になると思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇冒頭の5つの質問より
①モンティーホール
ドアが3つあり、どれでもいいからドアを開けるとその後ろにある商品がもらえることになっている。1つのドアの後ろには車が置かれているが、残りの2つのドアの後ろにはヤギがいるだけ。ドアAを選んだところ、(まだAのドアを開けていない状態で)司会者はCのドアを開け、そこにはヤギがいた。ここで司会者があなたに尋ねた。「ドアAでいいですか?ドアBに変えますか?」
⇒多くの人は「確率は1/2ずつであり変更しても有利になる訳ではないから選択を変えない」と回答する。正解は、選択を変えれば当たる確率は2/3に上がり選択を変えるのが正しい。⇒詳しくは本書で。
②対偶
次の4枚のカードがあり、表にはアルファベットが、裏には数字が書かれている。今、「母音が書いているカードの裏には偶数が書かれていなければならない」という規則が成立していることを確かめるためには、どのカードの反対側の面を確かめなければならないだろうか。
カード:「E」「K」「4」「7」
⇒正解は、「E」「7」。
「片側が母音ならばもう一方の面は偶数」の対偶は、「片側が偶数でない(つまり奇数)ならばもう一方の面は母音ではない」となり、7をめくる必要がある。
〇ギャンブラーの誤謬
20回のコイン投げの途中で5回続けて表が出たら、次は裏となる確率が高いと判断してしまう。野球の試合でシーズン2割5分打っているバッターがその試合では、それまで3打席無安打だと、次の打席ではヒットを打てるはずだと言ってしまうこともギャンブラーの誤謬の一種。
〇確証バイアス
一旦自分の意見や態度を決めると、それらを裏付ける情報ばかり集めて、反対の情報を無視したり、さらに情報を自分の意見や態度を補強する情報だと解釈するというバイアスのこと
〇損失回避性
損失は、同額の利得よりも強く評価される。人間が快感を得る仕組みの最も重要で大きな特徴は、人々はプラスの刺激よりもマイナスの刺激に対してずっと敏感である。
〇フレーミング効果
人が質問に答えるとき一般的には人間の意思決定は、質問や問題の提示のされ方によって大きく変わること
〇選択のパラドックス
人にとって選択肢が多いことは幸福度を高めるどころか、かえって低下させてしまう。例えば、選択できるファンドが多くなると401Kプランそのものに参加する人数が減ってしまう。
〇ピーク・エンド効果
人は個々の経験を総合して全体を評価するのではなく、その最も強い部分と最後の部分の印象が極めて重要であり、出来事の時間的長さは無関係である。
〇投影バイアス
人は将来の自分の選考を予測するときに、現在の自分の状態を課題に評価して、将来の時点でもその状態が続くと強く思ってしまう(空腹時にスーパーで食料品を買いすぎてしまう・・・)
〇区別バイアス
数量的な差(給料の差)は過大評価されやすく、質的な差(面白さの違い)は、過小評価されやすい。
〇公共財ゲーム
皆で力を合わせて仕事をすれば大きな成果が得られるが、誰もが他人の働きに対してサボろうという誘惑がある。
こうやって読んでみると、「あ~、結構、感情で動いているなぁ」と実感します。「そんな合理的に判断して動けないよ~」というのが素直な感覚ではないでしょうか。そう考えると、経済学やファイナンスなどで、「すべての人が情報を均等に有しており、合理的に判断できることを前提として・・」という条件は果たして何なのか・・と思ってしまうのは私だけ?