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MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

V字回復の経営(三枝匡)

 『V字回復の経営』(三枝匡)<3回目>(〇)
 言わずと知れた事業再生の名著。
 ストラテジック・リオーガニゼーション(SRO)の受講にあたり、参考図書として読み返しました。
 主人公の黒岩莞太が関連会社の立て直しのため、事業部長として出向し、事業を立て直していく、実話に基づく物語。「組織が抱える問題の本質は何か」、「人の心や組織風土をどう変えていくのか」といった、言葉にすれば当たり前のことも実際に取り組めばとても難しく悩ましいところに焦点が当たっています。一方、渦中にいる当事者の思い、葛藤もインタビューをまじえ、リアルな感じで伝わってきます。

 至る所に事業再生のポイントがちりばめられており、あっという間に線だらけになりました。随所に要諦がまとめられ、ずばっと明快に言い切る口調がとても分かりやすい一冊です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇改革の8ステップ(物語はこの順で展開されます)

①成り行きのシナリオを描く

 →現実の直視不足の壁を超える

②切迫感を抱く

 →危機感不足の壁を超える

③原因を分析する

 →分析力不足の壁を超える

④改革のシナリオを作る

 →説得性不足の壁を超える

⑤戦略の意思決定をする

 →決断力不足の壁を超える

⑥現場へ落とし込む

 →具現化力不足の壁を超える

⑦改革を実行する

 →継続力不足の壁を超える

⑧成果を認知する

 →達成感不足の壁を超える

〇企業戦略の最大の敵は、組織内部の政治性

 一緒に飲めばとても楽しく、性格も良い社員が、危機感の欠如と変化への恐れから、新しい変革に背を向け、身の安全を図る。結果的に、「正しいか正しくないか」よりも、「妥協」重視の組織風土を醸成する。

〇妥協的態度

 決定の先延ばし=時間軸の延長=競争力の低下。外で負けることよりも、内部をよろしくやることのほうが大事だと思っている。

〇数字の分解

 現場の者にとって役に立つ形に分解されて出てこないと具体的改善の切り口は見えない。それで、フリーキャッシュフローがどうのこうの議論してもナンセンス。

〇上層部と現場

 調子の悪い会社は、「上層部で大局的に語られている戦略」と「現場の実態」が繋がっていないに決まっている。

〇改革推進者と抵抗者

 社員一人ひとりがどこに属しているか見分け、コミュニケーション姿勢を使い分けること。

A:改革先導者(イノベーター)

B:改革追随者(心情賛成型、中立型、心情抵抗型)

C:改革抵抗者(アンチ)

D:人事更迭者

E:傍観者(外野席)

〇企業競争力の原始的構図

 「創って、作って、売る」。それをスピードよく回すことが顧客満足の本質。

〇時間の戦略

 カンバン方式は、単なる在庫減らしの手法ではない。時間価値という新しい戦略要素を追求する方法である。企業は時間の戦略を追い詰めることによって、新たな競争優位を構築することができる。

〇「改革シナリオ」の出発点は、「強烈な反省論」

 経営幹部や社員が反省論に共鳴すればするほど、改革に向けて集結していく。

〇社内のぶつかり合い

 先輩や上司が何かを成し遂げようと熱くなれば、部下を糾合し、指導し、時にはきつい言葉も出るはず。沈滞企業の内部では、そんなぶつかり合いは起きず、怒ったり厳しく叱ったりすることは、大人げない行為だとみられる。

〇仮説

 戦略とはまだ実行していないことを決めるのだから、「仮説」である。仮説の良し悪しは、ロジックで決める以外にない。

〇早期の成功

 改革は小さい成果で良いので早期に示すことが重要。それにより、「自分たちは間違っていなかった」という自信を得られる。それは、改革抵抗者の猜疑心を解きほぐす最大の武器になる。

〇ユーザーを知る

 ユーザーの経済メリットは、さまざまな要素が複雑に作用している。正確に論じるためには、ユーザーの仕事内容の裏側までよく知っていなければならない。

〇改革チーム

 閉塞感の強い日本企業の組織が「攻めの文化」を取り戻すためには、高い見識の「プロフェッショナリズム」を外部から引き込みつつ、「自らリスクに立ち向かう経営者的行動マインド」を持てる心理環境を実現することが必要。そうした改革チームを編成しないことには、凝り固まった組織の閉塞感を打ち破ることはできない。

 

 

 物語のほとんどが人の心理・考え方に着目しています。「できれば平穏でいたい」と考える大層の心を変えることは、改革するほうもされるほうにとっても、大きなストレスになります。でも改革に挑戦しないと競争には勝ち残れないという、組織を動かす難所がとてもリアルでした。

 主人公の黒岩莞太のように改革をぐいぐいと主導するスーパーマンはなかなかいませんが、本書でも「黒岩莞太の役割を何人かで分担して演じれば良い」という記載があり、そういう意味では、最初にどういう改革主導メンバーを揃えるかという点が改革の成否を分ける大きな一歩になると感じました。

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