MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ルネッサンス(カルロス・ゴーン)

 『ルネッサンス』(カルロス・ゴーン)(〇)

 少し前に読んだ、『カルロス・ゴーン経営を語る』の姉妹版のような内容(2001年出版)。ストラテジック・リオーガニゼーション(SRO)Day3で取り組んだケースの復習として読んでみました。90年代後半、日産の再建への取り組みを通じて、トップが成すべきことや、リーダーとしての想いがリアルに語られている良書だと思います。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇現場の問題認識(責任の所在)

 来日してすぐに現場を回って感じたこと・・・。日産の誰もがどこかが間違っていると感じている。でも、問題の原因は自分達ではなく他の部門にあると思っている。部門と部門、職務と職務のつながりが見事に断ち切られている。各部門ごとに自分たちは目標を達成していると信じていた。これは、世界の危機に瀕する企業に共通する問題。

 

〇現場の問題認識(重要度)

 瑣末な問題も大きな問題も一緒くたになっていた。ダイヤモンドも石ころも同じ重みで扱っていた。

 

〇トップの責任

 マネジメントの責任とは、会社が持つ潜在能力を開発し、それを100%具現化すること。マネジメントの仕事とは、会社と社員のために、会社と社員の能力を最大限に発揮させること。

 社長の仕事は、会社の中に見落とされがちな部分や曖昧な部分を残さないこと。可能な限り、あらゆる場所に光を当て、トップがあらゆる分野を公平に扱っていることを示していかなければならない。

 

〇トップは細部までこだわるべきか

 危機的状況にある会社の場合、社長が知らなくてよいことなどひとつもない。社長たるもの、顧客満足や価値創造に関わるすべての事柄について、仕事をスピードアップさせる機会や仕事を妨げる障害のすべてについて知っていなければならない。

 

〇優先順位の混乱

 冷暖房費の節減をするのもいいが、問題の核心に手を付けないのなら、いつまでたっても財政難から脱出することはできない。優先順位を決め、それに従って行動すべきである。経営トップは、責任をもって優先順位が正しく守られるようにしてあげなければならない。

 

〇優先順位の再設定

 ①プランニングを中央集権化すること、②実施に際しての明確な責任系統を確立すること。誰が意思決定し、誰が責任を負うのかを分かっていなければならない。

 

〇改革の意思

 業績不振の関連会社の社長交代を口にすると、かなりの抵抗に遭った。しかし、考えねばならない唯一の価値は「貢献」であり、全員が同じフィールドを同じルールで走り始めるまでは改革を続けるという意思を示したかった。競争力を回復させたいのなら、意思決定はビジネスの原則に基づいて行わなくてはならない。

 

〇工場閉鎖の意思決定(日産リバイバルプランで5工場閉鎖)

 座間工場閉鎖時の苦労から、日産は妥協案として、工場全体の閉鎖ではなく、一部生産ラインの閉鎖に留めようとした。しかし、この種の妥協は間違っている。生産ラインの閉鎖によって、部分的なコスト削減と問題解決は可能になるが、これは手術で切除すべき腫瘍に痛み止めを投与するようなもの。患者は良くなったと感じるかもしれないが、病気が治ったわけではない。誰もこれで問題が解決したなどと思わないだろう。いずれは不安が頭をもたげ、失職の心配が募る。悪循環だ。

 

 

 『カルロス・ゴーン経営を語る』では、大胆に踏み込まれていなかった工場閉鎖などのシビアな場面での想いが生々しく表現されており、やるべきことをしっかりやり抜く姿勢が特に印象的でした。

 悩ましい局面でも決断を迫られ、ある人にとっては非情だと感じることも実行していかなくてはならない立場。大局を観る眼とともに、それを自分の言葉で説明していくことが求められ、そして結果責任が問われる重責。そこには、経営者として、「こう判断すべし」というような、自分なりのブレない軸とでもいうべき確固たる信念を感じました。

ルネッサンス ― 再生への挑戦

ルネッサンス ― 再生への挑戦

 

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