『急成長企業を襲う7つの罠』(水谷建彦)
ベンチャーマネジメントの参考図書として読んでみました。
7割の企業が創業10年を迎えられない現状。企業のライフサイクル上、立ち上げ~軌道に乗せるまでも難しいですが、急成長していく過程もまた経営の難所。
本書は、帯にもありますが、企業の成長過程において、最低限知っておかないといけない基本的な観点がまとめられています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇好調な数字に惑わされ、メンバーのモチベーション管理が疎かに!
・経営者・管理職であるほど、メンバーにとっての業績拡大による充足感、満足感を高く見積り過ぎてしまう
・仕事の意識をメンバーが実感値を持てるレベルで噛み砕けていない
⇒4つのコミットメント:①組織、②ジョブ、③キャリア、④ミッション
〇自分たちはスゴイ、特別だ、という選民思想が発生してしまう
・驕りの抑止‥顧客不満足を自分たちに帰結できるか、顧客の問題としてしまうか
⇒客観視、俯瞰できる人材の育成(当初は経営者がその役割をはたすが、やがて、リーダーを育成する必要がある)
〇優秀すぎる人材をマネジメントできない
・成長フェーズでは背伸びしてでもオーバースペックな人材を採用すべし。しかし、切れる部下の言動(批判や指摘)に上司が翻弄され、適切なマネジメントを維持できない。
・「承認意欲が高く曖昧耐性が低いメンバー」と「軸を持たない管理職」の問題
⇒双方の成長が必要。経営者は、価値観・判断軸を明確にして部下に向き合う。部下には、全体最適の視点、自責の視点を教育する。
〇ボスの顔色をうかがう「ヒラメ方管理職」を高く評価してしまう
・上司の指示や方針に愚直に従うので、今何が課題かという視点を持たない
・何を指示しても「イエス」と答えるが、ふたを開けるとズレている
・報連相の頻度が実は低い(信頼失墜や叱責を避ける)。
⇒見極めの問題。管理職に求めるスキル・役割に基づく評価。
〇中途採用者の不活性・早期離職
・スキル評価の誤りや期待する役割とのミスマッチが発生する。
⇒採用戦略の明確化。職種の名詞は多義性が高い。因子分解して、面接の際にやりたいこととマッチしているか確認すること。
(例)営業
・「ターゲット選定×アプローチ手法の検討×実行とPDCA管理」
・「テレアポ×訪問」
(例)営業企画
・「顧客ニーズ把握×新商品開発×営業への商品情報インプット」
・「セミナー企画×セミナー参加者集客×当日運営」
〇近視眼バイアス(長期的視野よりも短期的視野)
・長期的視点を強くしたい経営者と、短期視点にとらわれてしまう現場の衝突
⇒ある程度ルール設計で対処していくべき領域
〇調性バイアス(みんなで渡れば怖くない)
・みんなが達成できる安易な目標設定をしてしまう
⇒みんなが達成できる目標は難易度が低すぎる。7割程度が達成している目標を創り出す。これは経営者の役割。
・変化を好まない社風への変化。新商品・アイデアが出にくくなる。
⇒外部の視点の取り入れ(外部スタッフの会議への参加など)。中途採用もひとつの手段。
急成長の罠というと、パッと頭に浮かぶのが、①ハード面:経営者の管理スパンを超える(組織的をコントロールするルール作りが必要)、②ソフト面:社員に理念・方針が浸透しない(価値観共有のための取り組み)、③資金面:ワーキングキャピタル(運転資本)不足です。
本書は、ほとんどがヒトにスポットをあてていますが、①~③はいずれも越える必要がある壁。ただ、ヒトの問題は、常に付きまとうものであり、特に、社員が一気に増えた場合、コントロールしづらく、一気に難しくなるのは想像に難くありません。