MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ザ・ファーストマイル(スコット・D・アンソニー)

 『ザ・ファーストマイル』(スコット・D・アンソニー

 受講中ベンチャー・マネジメントの参考に読んでみました。

 ファーストマイル?何のこと?(途中までスマイルと間違ってました・・(^^;)

 それは、アイデア(商品・サービス)を計画から実行に移す局面のこと。アイデアが市場に受け入れられる確率は1%以下です。失敗原因はアイデアの良し悪しではなく、アイデアを推進するプロセスにあります。計画から実行へ移すために何を準備すべきか。商品・サービス立ち上げ時の乗り越え方が示唆されています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇ファーストマイルで使うツールキット「DEFT」

 ①Document:アイデアを文書化し、気づいていない前提を表面化する

 ②Evaluate:そのアイデアをいろいろな角度から評価する

 ③Focus:戦略に影響を与える不確実性にフォーカスする

 ④Test:テストを繰り返し、速やかに軌道修正する

 

〇アイデアを文書化する(Document)

ファーストマイルの出発地点:3つの要件

 ①需要はあるか?

 ②提供できるか?

 ③取り組むべきか?

→この続きに、さらに27の質問があります。

 アイデアを書き下ろすことの意味は、「自分が知っていると思っていたこと」を「現実に知っている状態」に変換することにある。

 

〇アイデアを書き下ろす際のツール

①アイデア・レジュメ

 ターゲット顧客、片付けるべき用事、消費を妨げるもの、アイデアのスケッチ/概要、基礎となるビジネスモデル、重要な仮説、インパクトの大きさ、テスト計画

②ビジネスモデル・キャンパス

 顧客、製品・サービス、販売チャネル、マーケティング方法など

③通常のビジネスプラン

 

〇アイデアを書き下ろす際の4つの間違い

 ①アイデアとビジネスを区別できていない:「もし~だったら」

 ②初めか終わりかの一方だけに注力する:「最初の1ドルどう稼ぐか、30日後、60日後、90日後、1年後、3年後、5年後はどうか・・?」。

 ③一部の関係者の視点だけで物事を見る

 ④理解は得たが、共感を得ていない:簡潔にアイデアを伝える

 

〇評価する(Evaluate)さいの留意点

スプレッドシート表計算ソフト)は、所詮、想像上のもの。スプレッドシートで作成した「規模の予測」は信用できない。時間をかけすぎる意味はない。想像上の数字を追い求めても仕方ない。

スプレッドシートを利用して財務分析をする目的は、設定された前提を明らかにし、前提の妥当性を検討すること

 

〇アイデアの4つのPを計算する

 ①顧客の数(Population)

 ②価格(Price)

 ③購入頻度(Purchase)

 ④開拓しなければならない市場の大きさ(Penetration)

  ④=目標とする定常収入÷(①×②×③)

 →うち重要な2つの変数を変化させ、感度分析を行う

 

〇逆損益計算書をつくる

利益を出発点として因数分解する。

 利益→(売上ーコスト)→(売上=顧客あたり収入×顧客数)・・・

 

〇不確実性にFocusする

「・・・だと思う」という表現で文章を終えるときは、要注意。

 

〇確実性の高さ(低い方から高い方へ。どのレベルにあるか)

①需要はあるか

 あると思う→別の手段で代替した→実際使用した→購入した→リピートした→人に勧めた

②提供できるか

 想像できた→絵にかいた→プロトタイプを作った→テスト販売を行った→正式販売を開始した→販売が拡大した

③取り組むべきか

 封筒の裏モデル(メモ)→購買モデル→ビジネスモデルを描ける→販売単位当たりの収益を見込める→実際に利益を計上する→収益性のあるビジネスが継続する

 

〇テストし軌道修正する(テンプレート)

 ①仮説

 ②実験の目的

 ③予測される実験結果:詳しく書けば書くほど、計測方法について深く考える。

  →因果関係を考えれば、実験から学ぶ姿勢が身に付く

 ④実行計画(チーム・資金・期間)

 

 著者は『イノベーションの解(実践編)』を執筆、『イノベーションのジレンマ』で有名なクリステンセン教授とも共著『イノベーションの最終解』を執筆されるなど、イノベーション研究の第一人者。

 一つひとつの検証ステップは、文字で読むと「ふ~ん」と読みすごしてしまいそうなのですが、例えば、「財務分析をする目的は、設定された前提を明らかにし、前提の妥当性を検討すること」というような発想はなかったので、事業化までのステップが持つ意味を深く考えさせられました。
(そうやって深く読まないと、本当に「ふ~ん」となってしまいます・・・)

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