MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ルイ・ヴィトンの法則(長沢伸也)

 『ルイ・ヴィトンの法則』(長沢伸也)

 グッチ、シャネルに続く、ラグジュアリーブランド第3弾として読んでみました。

 本書は、4Pの観点からルイ・ヴィトンの戦略を分析・整理した内容です。

 グッチ、シャネルの本では、社歴やCEOとデザイナーの関係などの組織・人事のアプローチからブランド戦略が書かれていたのとは違い、オーソドックスにマーケティングの切り口からブランド戦略について書かれています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

《PRODUCT》

〇真贋判定禁止の法則

 真贋判定をしないので贋物が蔓延していると考えてはいけない。むしろ逆。本物を保証できるのは、ルイ・ヴィトンの正規店だけである。一番の神髄がここ。正規店で買うことを勧める構造を作り上げている。

 

セカンドライン禁止の法則

 メインラインより相対的に低価格ラインであるセカンドライン商品を持たない。メゾン志向ブランド(ブランドの歴史蓄積、伝統のクラフツマンシップ)は、安物を作ろうとはしない。

 

〇ライセンス禁止の法則

 一切を自社の管理のものとに置くのは、LVMHの各ブランドに共通するマネジメント手法。寝ているだけでロイヤリティが入ってくるライセンスは、一度始めたら止められないが、高価な服と安物のスリッパに同じブランドのロゴがつけば、長期的にはブランド価値を下げてしまう。

 

〇入門ブランド禁止の法則

 ピンからキリまであると、ブランドイメージが安定しない。

 

〇自前生産の法則、アウトレット品発生禁止の法則

 自前で育成した職人が自社工房でつくっているからアウトレットはでない。生産は潔癖主義、できた製品は直営店を中心とした正規店のみで販売する。外注化は身軽になるが、ブランドマネジメントとしては失格。

 

《PRICE》

〇バーゲンセール禁止の法則

 品質に対してひたすらこだわり、これまでバーゲンセールを1度もやったことがない。すべてのお客様に同じ価格で販売することが価格戦略の核。

 

〇オマケ・セット販売禁止の法則

 セット販売も、値引きに繋がるので認めない。

 

《PLACE》

〇適正販路の法則

 不適正価格への対処というPRICE戦略がPLACE戦略を知るうえで欠かせない事柄。並行輸入業者に販売制限をかけ、直営店方式で店舗を展開した結果、価格を一定に保つことに成功。ブランド=信頼という認識を顧客に与えた。

 

〇リペア万全の法則

 愛用者であればあるほど修理に対しての要求が高いことを熟知している。これらの顧客に満足を与え、長期にわたり愛用いただくことがブランドロイヤリティーを高めることになると信じている。

 

《PROMOTION》

〇リーチ(テレビCMなど)とリッチネス(個別面談による製品紹介など)なら断然リッチネス。

 

〇ミューズ(ブランドを気にいっている有名人)の法則

 最高の有名人を使うが、特定の人だけをミューズにしない。一人の人物の盛衰と一蓮托生では、ブランドは人間の寿命を超える長寿を得られない。

 

《BRAND》

〇デザイナーと職人の両輪の法則

 技術は累積可能、技能は本人だけのもの。ルイ・ヴィトン家と職人らが受け継いできたものは、技術。作るための道具の仕様、設計図、手順を文書にできる。

 

 

 他にも多数の法則(全部で50以上)が書かれています。4Pも生産体制もすべてはブランド力を高めることに繋がっており、その方針は首尾一貫しています。グッチやシャネルに比べ、組織としての仕組み化が素晴らしいと感じます。

 ラグジュアリー業界の王者に君臨するルイ・ヴィトン。仕組み化の裏側には、王者の戦略と簡単に片づけられない、脈々と受け継がれる企業精神を感じます。

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