『「事務ミス」をナメるな!』(中田亨)
仕事の参考図書として読んでみました。
本書は、実際の事務ミス事例を引用しつつ、事務ミスとは何か、どうすれば防げるかという内容が書かれています。本書でも指摘されているとおり、製造業ではヒューマンエラーが人命にかかわる事故につながったりと、ミスが深刻な影響を与えるのに対し、文系の会社はミスへの免疫が低い傾向にあるので、意識を高める意味でも参考になると思いました。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ミスは知恵の副作用
「人間は完璧ではなく、どうしても間違いを犯してしまう」という考え方に対し、実際は、「人間の知恵が働き過ぎたため、その副作用で間違えた」という事例が多い。
①情報に乱れや誤りがあっても即座に取り除ける
⇒細かい異常に気付けない
②不十分な情報だけで短時間で決断できる
⇒明らかに誤った選択肢を排除すると、残った選択肢が良く見える(錯覚)
③繰り返せば上達する
⇒一旦こうに違いないと追い込むとその後の作業が徹底的に実行されてしまう
〇ミス対策のとらえ方
①「能力が無いからミスをする」ではなく、「能力の副作用でミスをする」へ
②「ミスの大半は素人」から「玄人のミスでも警戒すべき」へ
〇アリストテレスの「間違い2つの原因」
①相反する事柄が同一の知識に収容されている
②理性は多くの事柄を対象にできるが、欲求は一つの事柄しか取り扱えない
⇒一つのことしか目に入らなくなり、短絡的行動に走る
〇人間は、具体的な問題では間違えにくいのに、抽象的な質問のされ方をすると、いとも簡単に論理の間違いを犯してしまう。
〇未発覚の不良
本当に怖いのは、まだそれに気づいていない、未発覚の不良。小さなミスのほうが気づきにくく、かえって大きな事故を呼び起こしやすい。気づいたときには、手遅れになる潜在的な不良を自分の工程で検知し、食い止め、事故が起こらないように不確かさを圧縮する人こそが、事務ミスを防げる人。
〇便宜性と確実性のトレードオフ
そもそも、わが社はどの程度の便宜性と確実性を欲しているのかということを再検討しなければならない。
〇問題の6つの解決策
①しなくて済む方法を考える(廃止案は問題解決の基本)
②作業手順を改良する
③道具や装置を改良する、または、取り換える
④やり直しが効くようにする
⑤致命傷にならないための備えを講じる
⑥問題を逆手に取る(これを機に新たなやり方を取り入れる)
〇意味に応じた手順整理の原則
意図が分かりやすい手順を守ることで、無意識にミスが防げる
〇行きがけの駄賃の原則
相性が良い作業は、まとめてやってしまう。
〇仕事の終わりは、達成感を先走って感じやすくなり、注意力が緩む。
〇書式レイアウト
事務ミスが多発する仕事には、必ずと言っていいほど、紛らわしい書式の書類が存在する。しかし、紛らわしい書式を咎める人が驚くほど少ないのが実態。印刷された書式は、たとえ欠陥があっても「何となく上手くできているように感じるから直そうとしない」
①注意不足
②周知徹底
〇通達は読みやすく、シンプルに(4つの「ない」に注意)
①つまらない ⇒ おもしろそうだ
②自分に関係ない ⇒ 使えそうだ
③自信がない ⇒ やればできそうだ
④できても嬉しくない ⇒ できたら楽しそうだ
どこの会社でも悩み続けていると言われる、事務ミス。すべて、システム化すれば完璧かというと、システムトラブルが起きたり、システム化によってそもそも業務の意味を考えなくなってしまったりと、決定打が無い難しい問題ですね。しかし、いずれの企業も顧客に対して責任を負っている訳であり、今後もまだまだ進化を遂げていく分野だと思います。