『IGPI流 ビジネスプランニングのリアル・ノウハウ』(冨山和彦)(〇)
冨山さんのリアル・ノウハウシリーズ。今回も実務の最前線の経験から、実際に使えるかどうかの観点から、ビジネスプランの作成の意味、作成方法、勝ち抜きシナリオについて、まとめられている良書です。
『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』と併せて読むと、効果が高まると思います(本書の中でも、ところどころ、同書について触れられています)
(印象に残ったところ‥本書より)
〇リアルな事業計画とは?
①事業という無形資産をリアリティのある「物語」として有形化する手段
⇒ステークホルダーに現実感を持ってもらう
②リアルな「稼ぐ力」のメカニズムの説明書
⇒言語・数値・数式
③説得のツール
⇒頭・心に刺さる
④事業を遂行するための行動計画
⇒集団が共通の目標に向かう「共通の計画書」
⑤PDCAを回すための仮説
⇒ある前提条件を置いたときに、「この稼ぎのメカニズムのビジネスなら、こうなるはず」という仮説を立てる
⑥自らの人生の計画書の一部
⇒よりよくリスクをとり、よりよく生きる
〇「目からうろこ」の事業計画
あるわけない。
将来にわたる、外部・内部環境を見極め、課題解決の必要性や代替手段での解決余地、自社リソース(金銭・人員)や競合状況など、幅広く検討のうえ決めたことに、本気で取り組んでこそ、運も味方につけて、成功可能性が高まる。
〇提案の「善し悪し」
業界の概観(市場規模、競合、サプライチェーン、参入障壁、スイッチングコストなど)を押さえたうえで、なぜこのターゲット・商品なのかが分からなければ、提案されているものの「善し悪し」は、判断できない。
〇リアリティ不足の検討
「なぜ」「どういう人が」使うのかというコンセプトが不足したまま、数値だけが積み上げられている。「ユーザー数が変わったら?」「PVが変わったら?」というシミュレーション発想がないため、「他のケースが見たい」というオーダーに耐えられない計画が多い。
⇒検討期限を設けたリアリティチェックをチーム一丸となって行うことが必要。
〇残念な事業計画
①根拠の見えない数字になってしまっており、具体性がない
②実行現場の納得感を得られず、作った後に日の目を見ない
③作ることが目的になってしまっている。
〇完成までの流れ
①目的を明確にする(何のため、誰のため)
②作成すべき資料を明確にする
③納期を明確にする
④収集すべき情報を検討し、入手する(何を前提条件とするか)
⑤入手した情報に基づいて前提条件の将来性を考え、エクセルモデルを作成
⑥作成したエクセルモデルの違和感を検証し、シミュレーションを行う
⑦エクセルモデル完成(暫定版)
⑧プロジェクトオーナーに報告する
⑨見直し指示があった場合、④~⑤に戻る
⑩エクセルモデルを最終化する
⑪実績に基づき、エクセルモデルをアップデートする
〇目指すべき事業計画
目標に届かない場合、どのような施策を行うのかを検討できるツールとなることで、事業計画は初めて意味のあるものになる。「その時点で最適な事業計画」「変更に耐えうる事業計画」こそが目指すべき事業計画。自分たちが経っている場所はどこなのかを理解することで、非常に現実的な議論ができるようになる。
社内外双方へのコミュニケーションツールであり、内部の理論だけでなく、外部の視点をも意識した策定や発表方法が求められている。
〇IGPI流 事業再生計画
「どの程度まで利益を確保する必要があるのか」「改善する必要があるのか」を最初に算出し、見極めを行う。1つの目安として捉えているのは、借入金に対してEBITDAが1/5程度の水準。
〇勝ちパターン
ターゲット特性×製品コンセプト×事業モデル×優位性基盤×経営・組織モデル
「ワン・ワード」「ワン・センテンス」で事業モデルが表現できるか。
〇競争優位のパターン
・競争優位の形成箇所(供給側/需要側)
・形成される競争優位の内容(価値の高さ/費用の低さ)
経営者(経営陣)の頭の中にある戦略と数値をまとめた事業計画書。計画書の作成に至る前提として、経営者のビジョンや戦略が大切なのはもちろんですが、見えないものを計画書で可視化することで、多くの人を巻き込むきっかけになる。そんな大事な役割を果たす計画書が実のあるものになるように。より使えるものになるように。そういう現実的な話がてんこ盛りでした。
IGPI流 ビジネスプランニングのリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)
- 作者: 冨山和彦,経営共創基盤
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/04/18
- メディア: 新書
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