MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

忘れて 捨てて 許す生き方(塩沼亮潤)

 『忘れて 捨てて 許す生き方』(塩沼亮潤)(〇)

 あすか会議2015の登壇者、塩沼亮潤さんの著書を読んでみました。著者は、1999年に、大峯千日回峰行という、奈良県大峯山の頂上にある大峯山上本堂までの 往復48キロの山道を1000日間、1日も休まず歩き続けるという行(なんと、1300年間で2人目!)を満行された方です。さらに、翌2000年には、翌年、四無行(断食、断水、不眠、不臥を9日間続ける)も満行されています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇難行道と易行道

 人生には苦楽の先にある本当の幸せを求める人それぞれの道がある。何もお寺に入門し特別な修業をしなくても、「易行道」という道も心理に至る道。日常生活の中で、ありとあらゆるとらわれから解放されて、やがて穏やかな境地に至るという道もある。

 

〇相手を尊重する

 自我を抑えて、自分を大切にするのと同じように、相手も尊重する。たとえ嫌なことがあっても、忘れよう、捨てよう、許していこうという、その心構えが、人生を喜びの世界に転換してくれる可能性がある。どんなことがあって、人を恨まず、嫌わず、広い心で許す。この寛恕の心が回りまわって穏やかな心となって人生に返ってくる。

 

〇極限状態からの学び

・「人間の体っていうのは不思議なもので、追い込まれるとホウレンソウを食べても、そこから塩分を取る。普段、私たちの胃腸はホウレンソウから塩分なんか取らんでしょうが、いざそうなると人間本来の機能が出て、お腹の中に入ってきたものの栄養すべてを吸収するようになるんですな」(お師匠さんの五穀と塩を100日間断つ修業から)。

・人間の体は極限に追い込まれれば追い込まれるほど、徐々に不思議な力を発揮し始めて、その状況を克服し、何とかその期間、体調を維持してくれる。

・結局、私たちは追い込まれないと、本来の力が眠っているのかもしれない。土壇場に追い込まれて初めて自己を省みたり、第三者的に自分を見つめて自分の至らなさや未熟さを悔いて生まれ変わる。修業にはそういう利点がある。

 

〇教えは「楽譜」

 音楽に喩えると、教えは楽譜。楽譜を正確に演奏するとやがて真理に近づく。お釈迦様やイエス・キリストは偉大なる作曲家。「清く正しく生きていきたい」という楽譜があれば、あとは練習あるのみ。演奏はうまくいくときも、いかないときもあるが、その楽譜を徹底的に極めることが、一日一日、真理に近づいていく一番の近道。

 

〇真理の道

 一つのことに執われてしまうと、「なぜ」「どうして」と思えば思うほど深みにはまり、ますます執着が強くなって、本来あるべき真理の道を生きていくことができなくなる。そうではなく、いま与えられている状況の中で、善きことも悪しきことも、すべてを自分自身の心の成長の糧とし、執着を棄て、あるべきように、ただあるがままに生きていく、苦楽の先にある穏やかな境地であり、そこが真理の世界。

 

 「人は極限に追い込まれたときに、眠っている本来の力が発揮される」。これだけの修業を重ねて経験を積んできた方が実体験として語られる、その内容はとても興味深い内容でした。誰もが、著者のような経験を積める訳ではありませんが、著者がおっしゃるように、「難行道と易行道」という考え方に基づけば、自分なりに極限に身を置くことができるのではないかと思います。

 大切なことは、その積み重ねとそこから何を感じて、どう活かすかですね。

忘れて捨てて許す生き方

忘れて捨てて許す生き方

 

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