MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

成功することを決めた(遠山正道)

 『成功することを決めた』(遠山正道)(2回目)

 あすか会議2015の登壇者、SoupStockTOKYOの遠山社長の著書を読んでみました。

 三菱商事からKFCに出向中に社内ベンチャーとして企画し事業がスタート。その後、独立・MBOに至りますが、決して順調な訳ではなく、汗をかき、知恵を絞りながら倒産の危機を切り抜け、徐々に企業らしくなっていく、その間の社員との奮闘ぶりがとても参考になる一冊です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

事業企画書と「秋野つゆ」

 社内の事業企画書「1998年 スープのある一日」、事業立ち上げ後に社員に対する事業コンセプトを共有するために創られた「秋野つゆ」という仮想人物。どちらも、思いを共有化するために、よりイメージが湧くようにストーリー化して伝えられているところがコミュニケーション手段として秀逸。ご本人も本文で、「非常に見えやすい具体的な目標設定になっている」と振り返っていらっしゃいます。社内でも「バイブル」になっているとのこと。

 →内容は、本書を見ていただくことに尽きます。特に、事業企画書は、20ページ以上を割いて、原文がそのまま掲載されており、これだけで本書を購入する価値があると思います。

 

〇傑作ができるとき(スープ開発と作品開発を重ね合わせて)

 ビジネスマンとしてだけでなく、抽象画を描き個展も開かれる芸術家の側面も持つ著者。「こういうものを描こう」と思って描いたものは、そういうものになる。自分の想像を超えるものにはならない。一方、無理やりに作業を重ねていったときや、嫌いだった一枚を無理やり合わせてみたときに、アレッと声を出したくなるようないいのものができたりする。

 

〇倒産の危機と「炎の70日」

 倒産の危機にみまわれた当時のメールなどからドキュメンタリーで描かれた70日間。その中から。

 これまで、「言いたいことあれば、私を捕まえて、堂々と提案して欲しい。自分もサラリーマン時代はそうしてきたんだ」と、自分の信念を社員に伝えてきた。しかしそれは、上司との距離が近いとき、あるいは、将来像や仕事に対する考え方を共有しているときにはじめてできることなのだと気が付いた。現実には、そこまでの関係に至っていない社員がたくさんいた。

 「会社っぽくない会社をつくる」という言葉が誤解を生じさせ無責任な体質を産んでしまった。現場では、お客様に褒められ売上を上げるために様々なアイデアが熱く語られていたが、「だけどきっとそれは遠山さんがダメというだろうな」「普通のファーストフードっぽいと言われるかも」「ダサイって言われたらどうしよう」‥。 こうした状況に対して、蔓延していた不安を取り除き、現場の美意識と情熱を信頼することを宣言した。

 

〇「炎の70日」から得た7つのこと

①経営の不作為の帳尻は必ずどこかで合わせなければならない

②見たくない現実ほど早く対処を決める必要がある

③人材は「やりたくて・やれる人」でなければ仲間も本人も苦労する

④言いづらいこと、大変なことを要求しあえることが本当の仲間

⑤我々は、どんな苦難な時でも、個人としてのユニークさとチームとしての強さを持ち続けられる

 

 あすか会議2015では、第六部分科会において、遠山社長と樹林伸さん(作家)、松永貴志さん(ピアニスト)の3人で、『クリエイティビティと経営』(仮題)というテーマで対談されるようです。異色の3人のコラボに興味があり、第1希望にしようと思います。昨年聞けなかった遠山さんのトーク、楽しみになってきました!

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