『不可能を可能にするビジネスの教科書』(藤原和博)
本書は、あすか会議2015の登壇者で東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学の校長を務めた著者が、同じく、あすか会議2015の登壇者の星野リゾートの星野佳路さんとの対談をまじえ、経営者としての視点を語り合う内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇藤原氏と星野氏の3つの共通点
①子供時代によく遊んだ
②西洋におもねる必要を感じない世代
特にアメリカ的なるものに距離を置く態度。上下関係で権威的にマネジメントするのではなく、フラットなコミュニケーションが日常的に飛び交う。
③仕事のやり方
リゾートを復活させる仕事も地盤沈下を起こした公教育を再生し学校を核に地域社会を再生されること。じつは、どちらのアプローチもコミュニティを再生しようとする、コミュニティ・ソリューションである。
〇和田中と星野リゾートの経営の共通点
①ストロークを多くする
→リズムとテンポを重視して、報連相のスピードを上げ、修正主義でことを運ぶ。初めから正解なんてないので、やってからフィードバックをガンガンして、改善していく(藤原氏)
②フラットな組織
→星野リゾートの一番重要な価値観はポジションに関係なく、議論できるようにしようとすること(星野氏)
③社会貢献的な要素を打ち出す
④遊びの要素、学びの要素を強くする
→不可能を可能にする組織には、必ず学びの要素と遊びの要素が入っているというのが持論。「遊学働」が一体となっていたほうが、仕事の自己実現感覚がます(藤原氏)
⑤合理主義を貫く~正解ではなく納得感を~
→星野リゾートは数字を大事にしている。論理的であるということは、フラットな組織とセットだと思う。(星野氏)
⑥情報の徹底的な共有~パートやアルバイトに至るまで~
⑦資格ではなく、意思によって任せる
→手を挙げた者にやらせる。昔勤めたリクルートには、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ!」というスローガンがある。(藤原氏)
⑧一人ひとりの動機づけをサボらない
人事部に任せないし、部門単位にも任せない。中間管理職に任せないで、一人ひとりの従業員と会社が個別にベクトルを合わせていく(藤原氏)
⑨ビジョンを共有する強い組織は、必ずある種の宗教性を持つ
⑩シンボルをマネジメントする
→不可能なものを可能として実現していくためには、象徴となるものをどう打ち出していくかが肝になる。
〇最前線のスタッフとのコミュニケーション
文化が本当に自分が思っているような形で、最前線のスタッフに浸透しているのかというのを把握したいから、最前線のスタッフとできるだけ接するようにしている(星野氏)
〇情報編集力
正解が一つではない問題に対して、持てる知識、技術、経験を駆使して最適解、つまりは納得感を導く力が必要。テストでは採点が難しいこの力。本番に強い人やいつも運が良いように見える人、世の中の景気と無関係に元気な人に共通の力でもある。目指すべきは、「ジグソーパズルの達人」ではなく、「レゴの達人」。決まったピースを決まった場所に効率よく配置する力ではなく、想像して具現化する力。
今は、教師も編集者としての技を磨かなければならない。とりわけ校長には編集長としての役割を果たさなければならない。
お二人とも部下に考えさせ、その考えを引き出して結果に結び付けるということを大事にされています。また、自らも事業構想やリスクを取った決断役割というトップしかできない役割を果たし、常に自分を戒めながらビジネスに臨まれている姿が印象的です。
今回のあすか会議では、藤原和博さんは、第五部分科会のスピーカー、星野佳路さんは、第二部全体会でJR九州の唐池さん、元武雄市長の樋渡さんとの対談で登壇されます。ともに、以前から実際にお話を聞いてみたいと思っていた方なので、今から当日が楽しみです。