『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(北康利)(〇)
企業家リーダーシップDay3(松下幸之助さんを議論)のあとに、振り返りを兼ねて読みました。松下幸之助さんの生涯を綴った一冊という意味では、課題図書である『幸之助論』を超えているんじゃないかと思いました。写真も豊富でイメージが湧きやすく、松下幸之助さんを研究する基本書籍として良書です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ビジネスマンの一番大事な務めは愛されること
自転車屋の奉公時代の経験から。愛されることは媚びることではない。一生懸命お客様のために尽くさなければ、愛されはしない。
〇非情さ
商売の世界に身を置く中で、優柔不断であることは、会社も社員も取引先も、ひいてはお客様をも不幸にするだけだと悟り、時として非常になることを学んだ。
〇自らの体調不良との戦い
28~29歳のころに結核病院に3カ月入院。この後約25年間、身体の不調を抱え、死の恐怖と戦いながら人生を歩む。「お互い人間としてはいずれは必ず死ぬ。だけど、死ぬ瞬間までは、永遠に生きるようなつもりでベストを尽くす」
〇無借金経営
原則を無借金経営においておけば、新しい事業を起こすにも自ずと限度が出てくる。分限をわきまえて経営になる。盤石の横綱相撲が松下電器の経営の基本。
〇不況下の経営姿勢
「景気が悪い、モノが売れんと言うたかて、一時のことやろう。その都度、日本中の会社が生産をやめてしもうたら、この国はどないなってしまうんや」「こうしようやないか。明日から全員半日出勤や。その上で、午後は店員みんなで力をあわせて、一つでもいいから在庫を必死になって売っていく。その代わり、臨時雇いも含めて一人も解雇せえへん。これであかんかたら、その時はいさぎよううあきらめよ」
「五つや六つ手を打ったくらいで万策尽きたとは言うな」
「知恵っちゅうのはな、泉みたいなもんやで。ポンプつけてなぁ、かい出さんとあかん。かい出すとまた湧いてきよんねん」
〇部下を叱る
人を叱ることは楽しいことではない。できれば仲良くやりたい。しかし、心を鬼にして叱らねば人は育たない。叱ることほど難しいこともない。幸之助の仕事に対する厳しい姿勢と、その叱り方には、部下を委縮させずかえってやる気にさせる見事なフォローがあった。
〇部下に対して謙虚であるべき
「部下の良さ、偉さがちゃんとわかるか?自分の部下が100人いるなら、自分の偉さは101番目やと心から思える人間が真のリーダー」。謙虚でないと彼らの声が聞こえなくなる。謙虚であることは、素直に情報が耳に入ってくること。
〇一年前倒しで目標を達成したとき・・・
「目標を達成してくれた社員は当然褒めてやらんといかん。しかし、わしは社長失格や。目標と言うのはぎりぎり頑張って達成するくらいに設定せなあかん。それを一年も前倒しで達成できたということは、ここまで市場が大きくなることを読み切れんかったわしのミスや。もう一度勉強のやり直しやな・・」
〇信長・秀吉・家康のホトトギス
3人とも、ホトトギスが鳴くことを期待しているから出る言葉。
私(幸之助)の場合、「鳴かぬならそれもまた良しホトトギス」
講演会で「ダム経営」に関する質問で、「ダム経営の重要性はわかりましたが、どうすればその余裕を持てるのか?」という問いに対し、どんなノウハウが神様から聞けるのかという会場の期待・・・。
幸之助からの、「余裕を持とうと、何よりもそう思わなければいけませんわな」という答えに会場に明らかに失望の色が浮かんだが、ただ一人、鳥肌の立つ感覚を覚えたその人が稲盛和夫。「経営は『思い』である」という言葉の重みは、社員と思いを共有することに心血を注ぎ、その実現に命を懸けた人間にしかわからない。そのことを実践してきた稲盛には、幸之助の言葉が深い共感となって胸に響いた・・。
松下幸之助さんの研究では、「死生観」という言葉が最も記憶に残りました。生涯を通じて死と身近なところで生涯を送った幸之助さん。「永遠に生きるつもりでベストを尽くす」という言葉は印象的です。
そして、現代の名経営者である稲盛和夫さんと、「経営は『思い』である」言葉で通じ合えたというエピソードはちょっと感動でした。
生涯にわたる詳細な資料がたくさん残されている松下幸之助さん。偉大な功績を残した人生を研究するのにふさわしい方だと思います。