『幸之助論』(ジョン・P・コッター)(〇)
企業家リーダーシップDay3の課題図書『幸之助論』です。何といっても著者が、ハーバードビジネススクールのジョン・P・コッター教授、監訳が金井教授という点に惹かれます。リーダーシップ論の第一人者であるコッター教授に、松下幸之助さんはどのように映るのだろうか。
コッター教授が『幸之助論』で引き出した最大の教訓は、「人は経験から学ぶ。それも苦境を経験してこそ大きく一皮むける」ということ。
本書は、リーダーシップという面から松下幸之助さんの成長を分析した伝記です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇周囲の人物が語る松下幸之助さん
・「彼はたいへんな勉強家でした。自分がまともな教育をほとんど受けたことがないと思っていたせいもあるでしょうが、他人が言うことに注意深く耳を傾ける人でした」
・「彼は、他人を啓発することで、自分も啓発されると信じ、他人を助けることは、自分をも助けることだと信じていました」
・「身内に対しては、時に冷淡で厳しい人でした。家で夕食をとっているときでも、温かみを感じることはめったにありませんでした」
・「松下幸之助は自制心の備わったコンプレックスの塊でした」
・「子供の頃の幸之助はやさしく内気な少年だった」
・「若いころの松下が傑出した人物だとか、非常に才能のある男だとか思ったことはない。ただ、働く熱意だけは人並み外れていた」
〇丁稚時代
・どこから見ても過酷な生活だったが、学ぶことはたくさんあった
・修業は強烈だたまだ漠然とした夢と希望を実現するためには自分のエネルギーをどのように注げばよいのかを教えてくれた
〇創業時代
・このころまでに、困難を乗り越えればより強く成長できるということを知っていた
・「勤勉」、「競争心」、そして「夢を実現させようとする強固な意志」
・成功は自分が正しい道を選んで歩いているという証拠であり、失敗は人生で味わわなければならない不可避の試練である。
・創業初期に学んだことは、市場に出回っている製品より、僅か品質が良くても値段が安くても、そう簡単に世間は注目してくれない。
〇企業家時代
・企業人が目指すべきはあらゆる製品を水のように無尽蔵に安く生産することである。これが実現されれば、地上から貧困は撲滅されていく。
・「諸君は松下電器のために働いているのではない。自分自身と公衆のために働いているのだ。諸君が出会う人は誰もがお客さんなんだということを忘れてはいけない」
・遵奉すべき精神
①産業報国の精神(社会全体の富と幸福に寄与する)
②公明正大の精神(公正と誠実、公平な判断)
③和親一致の精神(共通の目的を実現するための能力と決断力の涵養)
④力闘向上の精神(能力を向上させる)
⑤礼節謙譲の精神(礼儀正しく謙虚)
⑥順応同化の精神(自然の摂理に従う)
⑦感謝報恩の精神(感謝の気持ち)
〇戦後のカリスマ時代
・「我々は、国家再建の任務を引き受けなければならない。全国民にとっての至高の義務である。会社もまた、企業の使命に基づいて、工場を再建し、速やかに家庭電化製品の増産に向けて奮闘しなえればならない。これは単に責務ではなく、責任でもある」
・自分の関与が少なくなっても反映して行ける組織を建設するために周囲の人々を指導しようとした。会社と国を有意義な目標に向けようとした。
・「我々は、虚心坦懐に現状を評価し、日本全体と世界全体の将来を見つめなければならない」
・「習慣に甘んじることのないように。たとえどれほど厳しくても、改革する勇気を奮い起こしてほしい」
〇PHP哲学
①人間は根本的に善良で、分別がある
②人類は物質的にも精神的にも、成長し進歩する力を発揮してきた
③人類は選択する力を持っている
④我々には、世界が直面している困難な問題に物質的・精神的な資源を集中させる力がある。
⑤困難な問題には、素直な心と他人から学ぼうとする気持ちで立ち向かう。
偉大な経営者が決して最初から偉大であったわけではなく、松下幸之助さんの場合、企業には必ずある浮き沈み(苦境)をバネに成長していった点にコッター教授は着目されています。
幼いころから苦労が多く、死を身近に感じながらも一つひとつ熱意を持って積み上げていく姿に学ぶべき姿勢があります。
- 作者: ジョン P.コッター,金井壽宏,高橋啓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/04/03
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