『一歩を越える勇気』(栗城史多)
あすか会議2015に登壇された栗城史多さん(プロ登山家)。分科会に続いて、ナイトセッションでは隣の席に座らせていただきました。こんなにすごいことを成し遂げてこられた方なのに謙虚で誠実なお人柄が印象的で、「応援したい!」という感情が自然に湧いてきました(そこから、TEAM KURIKIに参加させていただくことに)。
本書は、栗城さんの著書では、唯一読み終わっていなかった一冊でしたので、あすか会議後に読み切りました。まだ、凍傷を負われる前の2009年の発刊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇失敗は成功と同じカテゴリーにある
ある方の言葉、「成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと」
〇自分の中の無限の可能性(大学の先輩との冬山縦走からの学び)
これまでは自分が目標を持っても、これはできないと頭の中で決めつけていた。しかし、可能や不可能は自分が勝手に作っていた。
〇「一生懸命に生きる」を実践(単独マッキンリー遠征:初海外渡航)
大学山岳部で主将がいることで甘えながら登っている自分を越えたかった。今しかチャンスはない、そう思った。
〇生と死
死と隣り合わせになることで、生を感じ、生きていることへの感謝の気持ちが出てくる。死を覚悟することによって、自分は何のために生きるのか、何に命を果たすのかを考えるようになる。
〇最後に「ありがとう」と言ってこの世を去れる人間になれるように
中途半端に生きてはいけない。
〇夢を口にする
一日十回、誰かに自分の夢や目標を語ってみる。十回口にすると漢字の成り立ちどおり、「叶う」になる。
〇夢について
夢には2種類ある。かなう夢とかなわない夢。それには法則があって、かなう夢は必ず世のため人のためを考えていて、たくさんの人たちが支えてくれる。自分の欲望を満たすだけの夢を持っても誰も応援してくれず、いつしかそんな自分を嫌いになって、かなわなくなってしまう。
夢をかなえるために必要なのは、夢を志に変えること。世のため人のために自分の命を果たす覚悟を持つこと。
〇目標を達成した直後
目標を達成した瞬間そこで燃え尽きてしまったかのうように力が入らなくなる。ヒマラヤでは燃え尽きた瞬間が最も危険。山頂で感動すればするほど危険。だから山頂でも燃え尽きることがないように、冷静な自分を持ち続けなければならない。
〇執着を捨てる(「これでいいのだ」)
執着をすると大切なことが見えなくなる。山ではいつもこの執着との戦い。執着をしないとは、すべてをなくすことではなく、すべてに満たされること。
〇「ありがとう」
一歩が出ないほどつらいとき、「ありがとう」と口にすることによって一歩が出る。「ちくしょう」「負けないぞ」という気持ちを持つと力は出ない。山に対峙してはいけない。苦しみを受け入れ感謝する。「ありがとう」は困難な時代を乗り越える力のある言葉。
苦しい時には、「ありがとう」という言葉が出るというのは、同じくあすか会議2015で登壇された、塩沼亮潤大阿闍梨(1300年で2人目の大峯千日回峰行満行)も全く同じことを仰っていました。異なる領域ですが、お二人とも、極限の状況で生死と向き合うことで、感謝の気持ちが自然に出てくるとおっしゃっていることに驚きました。