『執らわれない心』(塩沼亮潤)
あすか会議2015に登壇された塩沼大阿闍梨の著書です。
2011年11月に発売された本書。仙台市の慈眼寺住職でいらっしゃることもあり、震災後の人の心を中心に書かれた一冊です。
(印象に残ったことば‥本書より)
〇人生とは、坂道ではなくて、階段のようなもの。小僧の時代から今までを振り返ると、悩んだり苦しんだり壁にぶち当たるような時期があり、それが過ぎるとまた穏やかな気持ちで歩んでいくことができる時期がある。
しかし穏やかな心境を得て平坦な道を歩いていると、またある日突然挫折を味わったり、いろんな苦痛やプレッシャーを感じる時期があり、それを乗り越えると、また穏やかな道を歩んでいる。その繰り返しで、階段のように進んでいくのが人生。
〇人生とは常に登竜門の繰り返し。マイナスのこともすべてプラスに転じていかなければならない。どんなにつらいことが起こっても、それを自己の成長のための鍛錬だと捉えて、努力して前を向いて生きていこうとする姿勢、心構えが大切ということ。
〇初めは何度も転んで、痛い思いをしても「自転車に乗りたい」という意思を強く持ち続け、あきらめずに練習するうちに、やがて誰でも自転車に乗れるようになる。一度覚えた感覚は一生わすれない。そうやって覚えたことを言葉や文字ではうまく表現できない。
それと同じく、自分の心も「こうありたい」と強く念じ続けて、そのための努力を日々重ね、自分なりに探求していけば、やがて挫折と挑戦を繰り返しているうちに、自分が望む心持ちが具現化されていく。
〇ある時こう思った。。。地球という修行道場で、それぞれが人生という行を行じているのではないか。そう考えると、人を恨まず、憎まず、忘れて、捨てて、ゆるして、感謝の心を持って生きていかなければならないと感じた。
〇お釈迦様の教え
「過去を追うな。未来を願うな。過去はすでに忘れ去られた。未来はまだやって来ない。だから現在のことがらを、それがあるところにおいて観察し、揺らぐことなく、動ずることなく、よく見極めて実践せよ。ただ今日なすべきことを熱心になせ」
〇人生良いことも悪いことも半分半分。良いことばかりを求めず、今なすべきことを、ただなすのみ。
〇苦しさには強いが、ぬるま湯には弱い。これが人の心。
〇忘れきる、捨てきるところに真の喜びあり。
あすか会議でお話を伺った印象もあって、本を読んでいても大阿闍梨が語られる声色や口調そのもので文字が頭に入ってきました。不思議なもので、他の登壇者に比べても、大阿闍梨のインパクトは強く、記憶の蘇りかたも鮮明です。なんとも伝えづらいのですが、こういう影響力のひとつをとっても、すごい方だなと思います。