『発想の技術』(樋口景一)(〇)
左脳派にも分かりやすい右脳派の世界!という感じでしょうか。クリエイターの世界ってセンスや感性のような勝手なイメージを持っていましたが、とても論理的な世界なだなと認識を新たにした一冊です。
本書は、アイデアを生むためのルールについて述べられています。つい先日読んだ、『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』(嶋浩一郎)で情報収集を学び、こちらの本で情報の使い方を学ぶ、というように2冊セットで読むと理解が進むと思います。
(印象に残ったところ)
〇アイデアとは
問題を解決し、継続的に世の中を動かすための動力
〇アイデアを生み出す流れ
①把握(課題となっているものの本質を見出す)
②発見(観察や洞察という基本動作)
③転換(変化を起こす際に最も大切な価値軸をどう作るか)
④具体(思考を深め、広げ、人々にとって意味あるものとして成立・定着させる)
〇対象把握の技術(物事を対象化し、構造化して把握する)
・課題があれば、「それはなんなのか?」という問いから始める。
・定義や歴史というそもそもに立ち返ることは、一般論よりも意味がある。
・「課題のすべてを疑う」。それがアイデアの土壌。課題に対する掘り下げの深さが、アイデアのスケールの大きさに繋がる。限りなく面倒くさい人間になり切る。
〇原因把握の技術
・アイデアの「もと」は課題そのものにひそんでいる。課題を生じさせている「原因」に隠れている。すべてのもとは、原因の設定の仕方。アイデアの限界は、原因の探求不足。何度もつっこんで、「Why」と問うことが大切。自分が解決できそうなところに課題を矮小化、表層化しないこと。
〇観察と洞察の技術
・すべての物事には必ず固有の理由がある。発見のもとにあるのは、違和感であり、適切な違和感を感じなければ発見にはつながらない。違和感とは「いびつな力」。
〇距離をつくる技術
・いろいろなカテゴリーの商品のことを同時に考えてみる。遠くのカテゴリーであるはずの価値基準を持ち込むことで、その距離感に対して人は驚き、新しい価値を認める状態になる。
〇視点の縮尺を変える技術
・どんどん視点を上げ、そこで見えてくるものとの関係性を考える。逆にどんどん視点を近づけていって、そこで見えてくるものとの関連性を考える。次に、過去・現在・未来という縮尺で見ていく。
〇敵を見つける技術
・企画が息づまる要因の一つとして、敵に対する「目線の甘さ」が挙げられます。その背景には、人間に対する畏敬の念の欠落があります。人間はある市場の中だけで生きているわけではありません。「スペック的側面」「空間的側面」「心理的側面」「文化的側面」「役割的側面」などで考えてみる。
〇論点を転換する技術(アジェンダセッティング)
・その場の議論と自分の有利な戦いにするための方法。議論をしているときに論点がぼやけてきたら、「ちょっと待って。この話について考えてみよう」と自分の得意なフィールドに持ってくるというもの。
〇価値を転換する技術
・時代が変われば人の価値観は変わる。価値観が変われば求められているモノの存在意義は変わる。
〇行動を転換する技術
・目的自体から変えるために、別の欲求をつくり出す。その欲求には元の行動から遠ければ遠いほど、固定化した行動を変えるための力を持つ。
〇存在を転換する技術
・何かがないという状態を作り、新たな行動につなげていく。欠落は、それが人々の支持の延長線上にある場合は、それを補おうとする欲求を生み出す。欠落という状況によって、その本質的な価値に気づくことができる。
〇役割を転換する技術
・もともと存在する良さを深く掘り下げること。隣力と際力。周辺にヒント。
〇戦いのレイヤーを変える技術
①一段上に行く
②別のカテゴリーにする
③成り立ちを考える
〇コンセプトの技術
・コンセプトとは、その商品が存在しなくてはならない理由。どうしてもその商品が存在しなくてはならない理由をひたすら考える。継続的に人々が支持するもの。できるだけ形容詞に頼らない。関わる人すべてを惹きつける引力を持つものとなっているか?
上記以外にも様々な発想の技術が満載です。集めた情報をどういう切り口で捉えるのか。でもその前に課題のとらえ方が大切。情報と課題のストックを増やしていきたいと、その気になる一冊でした。左脳派集団の中で右脳とのバランスが取れた存在になるとそれだけで価値があります。頭が凝り固まらないようにしないと・・・。