『イノベーション・オブ・ライフ』(クレイトン・M・クリステンセン他)(〇)
本書は、「~ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ~」という副題のとおり、ハーバードの授業の最終日に行われる、卒業生の人生に起こりがちな3つの質問についての講義をもとに、著者の考え方がまとめられています。
(3つの質問)
①どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう?
②どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を、ゆるぎない幸せのよりどころにできるだろう?
③どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?
(印象に残ったところ‥本書より)
〇幸せなキャリアを歩む
・優先事項、計画と機会のバランス、資源配分が全て組み合わさるうちに戦略が形成される。戦略が形を取り始める間にも、絶えず新しいことを学び、新しい問題や機会が現われ続け、それらが次々と戦略に反映される持続的なサイクル。この戦略プロセスを理解し、うまく運営すれば、成功するチャンス、心から愛する仕事につけるチャンスが最も高くなる。
・金銭を追い求めても、せいぜい仕事への失望感を和らげられるに過ぎない。動機づけ要因は、職業や時間を経てもあまり変わらないため、これを絶対的な指針として、キャリアのかじ取りをしていけばよい。金銭、ステータス、報酬、職の安定といった衛星要因は、ある一定水準を超えると、仕事での幸せを生み出す要因ではなく、幸せがもたらす副産物になる。
〇幸せな関係を築く
・家庭生活が万事うまくいっているように思われるときは、家族との関係への投資を後回しにできると、ついつい考えてしまう。これは大きな間違いだ。深刻な問題が持ち上がる頃には、関係を修復しようとしても、もう手遅れであることが多い。家族との強力な関係、友人との親密な関係を築くことに最も力を入れる必要があるのは、一見その必要がないように思われるとき。
・「伴侶が私に一番求めているのは、どんな用事を済ませることだろう?」その用事を実際に済ませる必要がある。時間と労力を費やし、自分の優先事項や望みを喜んで我慢し、相手を幸せにするために必要なことに集中する。相手のために価値あるものを犠牲にすることで、相手への献身が一層深まる。
〇罪人にならない
・何かを「この一度だけ」行うことの限界費用は、ないに等しいように思われるが、必ずと言っていいほど、それをはるかに上回る総費用がかかる。「もちろん原則としてこういうことをするべきでないのは分かっている。でもやむを得ない事情なんだから一度くらいいいだろう」。誘惑に負けた道が最終的にどこに向かっているのか、その選択肢にどれほどの総費用が伴うかには、気づきもしない。
・自分のルールを「いつも」守るのではなく、「ほとんどいつも」しか守らない怖さ。
・100%守る方が98%守るよりたやすい。最初の一歩は小さな決定。幾つもの小さな決定を正当化し続けるうちに、いつしか大きな決定を迫られる。だが、そのころには、もうそれほどのお大きな決定だとは思わなくなっている。ある時ふとあたりを見回し、前には考えられなかった終着点にたどり着いたことに気付く。
ビジネススクールで学び、知識も自信もつき、仕事でも力が発揮でき、順風満帆の未来が待っているような予感がするとき、この本を読み返したいと思いました。自分を戒めるというか、驕らないように、大切なものを見失わないように、謙虚な姿勢を忘れないように・・・たくさんの内省材料を含んでおり、これからビジネススクールを卒業する方には、特にお薦めの内容でした。何人かの講師からお薦めいただいた理由が分かります。
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
- 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 単行本
- 購入: 9人 クリック: 51回
- この商品を含むブログ (21件) を見る