『マイナンバーの実務』(梅屋真一郎)
2016年1月からスタートするマイナンバー制度。いよいよ、今月から番号通知が始まります。国民全員に12ケタの番号が付与されるこの制度。企業は様々な準備に追われています。新聞やテレビで目にするようにはなりましたが、一体どんな制度なのか。
本書は、マイナンバーに関する企業実務がコンパクトにまとめられており、ざっと概観と注意点を抑えることができます。
(ポイント‥本書より)
〇10月に届く「通知カード」
・身分証明書としては利用できない。
・個人番号、使命、住所、生年月日などが記載される
〇2016年1月に申請すれば交付される「個人番号カード」
・身分証明書、公的個人認証として利用できる
・通知カードの情報に加え、顔写真も表示される
〇マイナンバーの注意点
・厳しい安全管理
→企業としては、①目的外利用の禁止、②提供求めの制限、③本人確認の措置、④情報の安全管理
・マイナンバーはクレジットカードの番号ように扱うこと
→個人としては、①見ない、②言わない、③聞かない、④扱わない
〇目的外利用の禁止
マイナンバーは法律で定められた分野以外では提供してもらうこと自体が禁じられている。制度がスタートしても、当分の間マイナンバーは法律で決められた社会保障や税分野の利用に限られる。それ以外では使ってはいけない。
〇企業が行わなければならないこと
①従業員(役員含む)や扶養家族、謝金など個人の支払先など、各種帳票に記載が必要となる対象者のマイナンバーを集める
・マイナンバーは法定記載事項として各種書類に記載が必要。
・例え長年勤務している従業員であっても、ルールに則った本人確認手続きを取らなければならない(これは大変!)。
・謝金や地代など個人の支払い対象者についても従業員と同じように、本人確認を行ったうえでマイナンバーを集める必要がある(これはもっと大変!)
②集めたマイナンバーを保管する
・退職後、一定期間以降は保管できなくなる
・法律で定められている期間以上に書類などを保管することは、「本来必要な保管を行っている」ということで、「目的外の保管」に当たる可能性がある。これを避けるためには、番号記載のある書類・帳簿などは所定期間保管後、廃棄しなければならない。
→廃棄対象は、書類、システムのデータ、システムのバックアップデータなど、すべての情報を網羅して廃棄しなければならない。
〇課題
・生命保険契約者、保険受取人からのマイナンバー収集
→支払調書を作成する時点で保険契約者は亡くなっているため、相続人から番号を提供してもらう必要がある。
・従業員や個人の支払先から個人番号の提供を受けられない場合
→個人番号の記載は、法律で定められた義務であることを伝え提供を求める。それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経緯等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておく(国税庁のサイトより)
〇マイナンバーの今後の活用の方向性
①戸籍事務
②旅券事務
③預貯金付番
④医療・介護・健康情報
⑤引っ越し・自動車登録
〇マイナンバーがもたらす経済効果(年間3兆円以上)
①国民が受ける行政サービスなどの利便性向上:約7500億円
②民間企業などが行政に対して行う手続きの効率化:約6300億円
③民間企業などの業務効率化:約7000億円
④国・地方の行政業務効率化:約1兆円
企業の実務上、情報収集と情報保管に関する影響が大きく、個人としても自らの情報を管理しなければならないこの制度。「私はまったく、関係ありません」という訳にはいかなので、本書のようなコンパクトな書籍で良いので、1冊は目を通しておきたいところです。逆に知らないと怖いです(目を通しておいて良かった!)。