『戦略「脳」を鍛える』(御立尚資)(〇)
リスクマネジメントと企業価値の講義の指定図書です。長らくボストンコンサルティング日本支部の代表を務められた著者が、戦略論プラスアルファの能力(インサイト)をどのように身につけるかを説いた一冊です。本書の目的のとおり、経営戦略をある程度勉強してからプラスアルファで読むと効果が高いと思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇経営戦略も発見・模倣・イノベーションを繰り返すのが特徴で、「定石を越えた戦い方のイノベーション」こそが、戦略の本質。
→戦略論という定石を知ったうえで、新たな戦い方を作り上げる「プラスアルファの能力」を身につけた者だけが自らを差別化し、競争優位に立つ。
→勝てる戦略の構築に必要な頭の使い方とユニークな視座が必要
〇公式
①ユニークな戦略=定石+インサイト
・インサイト:勝てる戦略の構築に必要な頭の使い方、その結果として得られるユニークな視座。戦略論の知識を学んだあとは、ひたすら実践するしかインサイトを体得できない。
②インサイト=スピード+レンズ
・レンズ:よりユニークな仮説をつくり出すためのモノの見方であり、思考ツール
③スピード=(パターン認識+グラフ発想)×シャドウボクシング
・シャドウボクシング:右脳と左脳の二重人格。ここは実践で反復。
④レンズ=拡散レンズ+フォーカスレンズ+ヒネリレンズ
(分類)
■スピードの3要素
パターン認識、グラフ発想、シャドウボクシング
■レンズの3要素
拡散、フォーカス、ひねり
〇パターン認識するための必要コンセプトワード
①コスト系
スケールカーブ、経験曲線、コストビヘイビア(固定費・変動費、スケール/スコープ)
②顧客系
セグメンテーション、スイッチングコスト、ロイヤリティ、ブランド
③構造系
V字カーブ、アドバンテージ・マトリクス、デコンストラクション
(デコンストラクション‥レイヤーマスター、オーケストレーター、マーケットメーカー、パーソナル・エージェント)
④競争パターン系
ファースト・ムーバー・アドバンテージ(先行者利得)、プリエンプティブ・アタック(先制攻撃)
⑤組織能力系
タイムベース競争、組織学習、ナレッジマネジメント
〇グラフ発想
図で考えるだけではグラフ発想のようなシミュレーションが難しく、ダイナミックに戦略を構築していくのには物足りない。グラフ化するということは、自分の思考と表現したい事象を一旦モデル化することに等しい。
戦略を考える場合、粗くても数字のイメージを持つことが決定的に重要。戦略論の基本がミクロ経済であるため、大部分のコンセプトはグラフ化できるもの。
〇情報の分解
平均化された情報は、必ずしも実態を表さない。良い仮説を出すためには、まず平均情報をばらばらにし、個々のデータベースを鳥瞰することが第一歩。とくに、グラフ化してしまうと、たとえ平均情報でも事実を表したデータだと思い込んでしまいがちなので要注意。
〇ユニークな視点をもたらすレンズ
①拡散レンズ
ホワイトスペースの活用、バリューチェーンを広げる、進化論で考える
(進化論:商品販売量は最初寝ていてだんだん立ち上がるS字カーブが多い。時間軸で考えよということ)
②フォーカスレンズ
ユーザーになりきる、テコを効かせる(どこを押さえれば波及効果があるか)、ツボを押さえる(どんな顧客がツボになるか、リピーターなど)
③ヒネリレンズ
逆バリする、特異点を探す、アナロジーで考える
2日間にわたるリスクマネジメントと企業価値の講義では、うち丸1日が著者の講義でした。知見の幅、世界レベルの高い視点からビジネスの細部にわたる深さ、歴史への造詣、論理立てた説明・・・1日で学び取ることは難しいのですが、超一流の方に触れさせていただく経験は、自己成長が加速するように感じました。