地政学とは地球全体を常に一つの単位と見、その動向をリアル・タイムでつかんで、そこから現在の政策に必要な判断の材料を引き出そうとする学問のことです。
グローバル・パースペクティブを受講し、経済学、世界史とともにとても気になる分野である地政学についてまずは入門書を読んでみました(といってもやや難易度高)。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇地図帳・地球儀
各国で発行された世界地図帳を比べると、地名の表記のしかたもいろいろと違っており、それだけでかなり地政学の勉強になる。特に地形図と政治地図とを重ね合わせてよくみることが大切。
・地図というものは、それぞれ固有の思想があるだけに、うっかりすると妙な先入見を与えられるので注意が必要。
・いつも地球儀を片手にして、徹底的にそれに親しむこと。世界のあらゆる地方の相対的な距離関係は、平面的な地図だけでは感覚的に絶対に分からない。
〇地政学的見地から見る世界地図
・スエズ運河の存在する中東と呼ばれる地域が、実は有史以来一貫して、西欧のシー・パワーと大陸のランド・パワーとの交錯する地帯になっている。
シー・パワーとは平時、戦時を通じて海上交通を維持し、また保護する機能のこと。
むろん軍事力も含まれ、特に重要視されるのは、基地や寄港地を整備し維持できる物理的ならびに外交的な能力の存在。
・西欧世界とその文明の発達は、とどのつまり内陸アジアからの衝撃ないし圧力に負うものであった。
・ウラル以西の東欧の支配には、一定のパターンがある。それは北はバルト海、南は黒海によって挾まれた地峡を完全に占拠し、さらにこの二つの海を閉鎖海にすることによって、ひとまず完成する。これによって外部のシー・パワーからの有力な干渉をまぬがれることができる。
・チェコ人とスロヴァキア人とによって構成されるボヘミア一帯は、バルト海からアドリア海にいたる鉄道交通の要衝にあたり、鉱物、木材、水力および農産物等の資源に恵まれているから、ヨーロッパでも最も経済的に活気にあふれた一地方を形成する。
・ユーゴスラビアとして総称される南方スラブ系の三民族は、ギリシア正教(セルビア)とローマン・カトリック教(スロヴェニア、クロアチア)とに分かれて、とかく軋轢が絶えない。しかし、アドリア海に臨むダルマチアの諸港と、ベルグラードを経てコンスタンチノープルにいたる鉄道幹線とに依存して、一個の生活単位を形成することが可能。
・ルーマニアはカルパチア山脈の産する豊富な森林、鉱物、石油等の資源に恵まれ、さらにその平野部は、ヨーロッパでも有数な油田ならびに穀物生産地帯となっている。また黒海に臨むコンスタンツァその他の良港があり、軍国主義の台頭を監視するという国際連盟の役割からいっても、格別に重要視される国である。
・ギリシアが一番最初にドイツの支配から逃れられたのは、この国がシー・パワーとの接触が可能だったから。
・ロシアは、大陸国家だといわれるが、白海とバルト海、そして黒海という周辺部の海は、ことごとく運河または上記のような河川の体系によって互いに結ばれている。3000トン内外の外洋の航海にたえられるだけの艦船が、内陸を自在に往来できるのは、この国だけ。このことは戦略的にみて、大変重要な意味をもっている。
たとえばモスクワ近在の工場の製品を積載した船は、まず黒海に出てから、さらに地中海を経て、世界の各地に物を運ぶことができ、その間に荷物を積み替える必要がない。ロシア国内の水系は、南米アンデス山脈まで切れることなくつながっており、国内の河川航運と外洋における海運とをひとつなぎにしてみたのが、ロシアの〝水運〟である。
世界地図的に視野を広く、かつ、歴史的に深く物事を大局的に見るという着眼を学ぶことができる、ビジネスリーダーにとっては必要な分野だと感じました。経営や経済について、ひと通り学んだ後にはお薦めの分野です。