読売新聞の日曜日に掲載される書評欄の読書委員を2005年から10年間務められたキョンキョン。本書では、その中から97冊の書評が紹介され、各書評の最後にはその書評を読み返した現在の気持ちが書かれています。
見開き2ページで1冊の本を紹介。限られた文字数でその本の魅力を伝え、しかも自分らしさを表現する書評。その本が伝えたいことや、登場人物の特徴を引き出しながら、過去や現在の自分と重ね合わせて語られる文章から、人間的な魅力を感じました。どこからがキョンキョン自身の話で、どこから物語の内容なのか、時々分からなくなる文章はとても練り込まれています。
この本を書店で手に取ったとき、たまたま開いた136ページ、『四十九日のレシピ』(伊吹有喜)の書評の書き出しに、惹きつけられ買って読んでみることにしました。
(本書より)
「四十歳を過ぎた私の人生の中で、やり残したことがあるとしたら自分の子供を持つことだ。時間に限りがあることだから、ある年齢を過ぎた女性なら一度は真剣に考えたことがあると思う。家族の再生を描いたこの物語を読んで、私はそんな思いから少しだけ解放された」~。
本書で紹介された97冊は、短編小説やエッセイが中心で、私は1冊も読んだことがない本ばかりでした。せっかくだから、この中から、何か1冊買ってみようと思い、キョンキョンが「何冊も買っていろんな人のお誕生日プレゼントにしました」という、『頭のうちどころが悪かった熊の話』(安東みきえ)を買ってみることにしました。
ちょっとおもしろいタイトル。キョンキョンもそう思って選んだとのことです。
この本の書評の最後の一段落は、次のような言葉で締めくくられています。
「七つの寓話の動物たちは、みんな誰かのことを思って生きている。その思いは、孤独の空しさを知ったときに初めて大切にできることなのかもしれないと思った。この本は、きっと本棚を選ばないだろう。子供部屋から立派な書斎まで、どこに収まっても、どんな人が手に取っても素敵な一冊になると私は思う」