『意思決定12の心得』(田坂広志)〔kindle版〕
本書では、意思決定に必要な能力と、それを身につけるための心得を説いています。マネジャーの最も重要な仕事である意思決定。「絶対の正解」はない意思決定は、全身全霊を込めると、自らの精神を鍛え、深め、成長させる糧にもなると説く著者らしい心に訴えかけるような教養書です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇「意思決定」のための3つの能力
「直観力」「説得力」「責任力」を磨き、「衆知を集めて、独りで決める」という意思決定のスタイルを実践すること。
①理屈だけでは答えの出ない問題に、正しい答えを見出すための「直観力」
・「勘が鋭く、言葉に力があり、腹が据わっているマネジャー」
・これからの時代には、革新的な商品の開発や、創造的な戦略の創出は、優れた一人のプロデューサやマネジャーの直観力によって生み出される場合が増えていく
②組織内での合意を得て、組織を動かしていくための「説得力」
・「メンバーの意見を聞いたうえで、自分の信念に従って意思決定を行う」
③意思決定に伴うリスクを取り、その結果に責任を取る「責任力」
・これからの時代のマネジャーには、この「責任を取る覚悟」というものが、極めて大切な資質となっていく
〇大局観
ものごとを、斜に構えて見るよりも、こうしたエピソードを、愚直なほどに信じることが必要。
一般に、直観力や洞察力、大局観を身につけるためには、「感覚を磨く」ことが必要であると考えられていますが、実は、そうではない。むしろ、 「論理を究める」ことこそが王道。禅寺などの日常から離れた場所で 「感覚を磨く」といった修練を生半可に行うよりも、日々の仕事のなかで与えられる課題を、論理的に考えて、考えて、考え抜き、「論理を究める」といった修練を徹底して積むことこそが王道。
〇経験から体験へ
我々は「経験」が与えられたとき、その経験を深く「反省」することによって、それを「体験」にまで高めることができる。
「反省」という習慣は、プロフェッショナルの世界では、当然の常識であり、むしろ問題なのは、ビジネスマンの世界において、こうしたプロフェッショナルとしての常識が失われてしまったこと。
〇私心を「捨てる」のではなく、私心を「見つめる」
〇自分の「論理」を中心に語るのではなく、相手の「心理」が理解しやすいように語ること。プレゼンテーションにおいて最も大切なことは、「自分が何を語りたいか」ではなく、「相手が何を聞きたいか」。そして、「相手の最も理解しやすい順序で語る」、「相手がイメージしやすいように語る」
〇「悪い成功」と「良い失敗」がある。
リスク・マネジメントにおいて最も大切なことは、緊急時に表に現れたリスクを回避することではなく、日常時に深く潜在しているリスクを排除していくこと。そして、日常時に深く潜在しているリスクとは、人間や組織の持つ「リスク体質」とでも呼ぶべきもの。
表面的な「成功」のなかにも、将来の「失敗」の芽が含まれています。表面的な「失敗」のなかにも、将来の「成功」の芽が含まれています。それらを見抜く力を磨くことこそが、リスク・マネジメントの基本。「リスク分散だけではなく、リスク最小化の手を打つ」
〇「意思決定をする」ということは、決して「割り切る」ということではない。その「深き矛盾」をこころに把持したまま、自らの内なる声に導かれて「腹を定める」ということ。もし我々マネジャーが、この「答えの無い問い」を前に、「割り切り」によって逃げることなく、意思決定の後もなお、その問いを静かに問い続けるならば、おそらく、我々の精神は、ある深みへと向かっていく。
経験から体験へ。その過程の中で、直感力・説得力・責任感を磨いていく。奥の深いテーマではありますが、一つひとつの意思決定の場面を大切に、そして、真剣に取り組んでいけば、気が付けいたらいつの間にか成長しているのかもしれませんね。