MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質(松本 利秋)

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』(松本 利秋) [kindle版]

 

 グローバル・パースペクティブの授業で各国の歴史を学んでいくと、どうしても気になって外せないのが地政学。地図って、北を上に見ることに慣れ過ぎてしまっていたので、ちょっと視点を変えてみようと本書を読んでみました。

 頭でイメージするだけでなく、実際に地図をさかさまに見ると、「こんなに景色がかわるの!」とちょっと衝撃です。本書にも随所に逆さ地図が示され、逆さ地図をもとに各国の戦略の歴史を考えると、とても気づきが多いと思います。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

地政学

 地政学とは地図を基本にして、その地域特有の文化や、民族の歴史、その歴史からくる民族の基本的な発想、政治形態などの情報をインプットして俯瞰するもの。地政学では世界を海洋国家(シーパワー)と大陸国家(ランドパワー)の二大勢力に分けて、基本的にはシーパワーがランドパワーの膨張を抑止するという想定の中で世界観を構築していく。シーパワーの代表格は、かつてはイギリスであり、現在はアメリカ。

 

地政学の第一命題

 地政学の第一命題としてもっとも重要なものは、世界の心臓部としてのハートランドを占領し、ワールドアイランド(世界島と訳され、ユーラシア大陸にアフリカ大陸を加えた近代以前の文明世界を意味する地政学固有の概念)全体を支配するような、強力な勢力が出現しないようにすることだとされている。それが世界平和実現のための大前提であり、世界の国々は絶えず集団的な監視を怠らないようにしなければならないと結論付けている。つまり地政学的な見地に立ってヨーロッパから見れば、ウクライナやロシア西部は世界征服のための最重要地帯となり、そこに存在しているロシアから見れば、国家が生き残るためには絶対に譲れない地域ということになる。

 

〇中国

 中国が21世紀に経済成長期を迎えると、広大な国土の13億人以上の国民の生活を賄うために、海を意識しなければならなくなった。製品を輸出したり、原材料やエネルギーを輸入するには、自由に動ける海の道を確保しなければならないから。そう考えれば、中国大陸を取り囲む日本列島の存在が疎ましく見え、何とか出口をと探すと、絶海に浮かぶ小さな尖閣諸島が目に入ってくる。ここを自由にできれば軛から解かれ、船を縦横無尽に動かすことができるという発想が、現在の尖閣諸島を巡る日本と中国の軋轢の原点。
 加えて、中国にとって問題になるのはインドの存在。インドと中国はヒマラヤを挟んで国境問題を抱えており、これまで何度も軍事衝突があった。中国から見たインドは生存圏拡大の障壁となっている国であり、海洋権益の獲得の上でも大きな壁となっている。中東、アフリカからの海上輸送には、必ずインド洋を通過しなければならず、マラッカ海峡にはインドの海軍拠点が存在している。その上にあるアメリカの軍事基地ディエゴ・ガルシア島の存在も大きい。従って、中国の次なる目標はインドを軍事的に封じ込め、シーレーンの安定確保を図ることにある。そうなれば、「赤い舌」の実効性が増す。そこで中国が着々と進行させているのが「真珠の首飾り」戦略。中国はインドと対立しているパキスタンと友好関係を結び、グワダルの港湾施設を一新させた。    

 

〇ドイツ

 ドイツを中心にして逆さに地図を見れば、ドイツは東ヨーロッパからロシアの大平原に地続きであるが、西側はフランスに阻まれている。ドイツの北側には海があるが、東側のバルト海デンマーク半島とスウェーデンノルウェーによって通過できる範囲は狭められている。西側の北海への出口にはオランダが横たわり、さらに、狭いドーバー海峡を隔ててイギリスがあり、イギリスの監視なしに広い大西洋に出るにはイギリスとノルウェーの間をまっすぐ北上しイギリスの北を迂回する航路しか残されていない。      

 中国にせよドイツにせよ、大陸国家が逆さまに地図を見るようになった時、必ずと言っていいほど、海洋国家に取り囲まれているから自由に海外進出ができないと考え、既存の海洋国家と対決姿勢を執る。そして、海洋に浮かぶ島を領土にして、そこを軍事拠点にして自己の勢力を徐々に拡大していこうとする傾向がある。

 

 百聞は一見に如かず。まずは地図を逆さまにしてみましょう。そのとき、南を目指す際に見えてくる景色は?本書では中国・ドイツが中心でしたが、ロシアも代表的な例でしょう。固定概念を払拭し、視点を変化させる、気づきの多い一冊でした。

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