MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書(ケリー・マクゴニガル)

スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル)(〇)

 ストレスを避けるのではなく、受け入れてうまく付き合うことで、レジリエンスが身につく。思い込みを変えることで身体の反応を変え、選択までも変えてしまう。ベストセラーとなった『スタンフォードの自分を変える教室』で有名なスタンフォード大学の心理学者が描いたストレスに対する考え方。調査結果、事例も豊富であり、単なる精神論ではなく説得力のある内容です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇ストレスと死亡率(調査結果)

 強度のストレスがある場合には、死亡リスクが43%高まったが、それは「ストレスは健康に悪い」と考えていた人たちだけで、「ストレスは健康に悪い」と考えていなかった人は死亡リスクの上昇はなかった。年齢を重ねることをポジティブに考える人は、心臓発作のリスクも80%低い。

 

マインドセット(思い込み)効果

 薬のような短期的効果ではなく、長期的影響をもたらす。「ストレスには良い効果がある」というビデオを見た人は、「ストレスは心身を消耗させる」というビデオを見た人に比べ、DHEA(神経ステロイドのひとつで脳の成長を助ける)分泌量が多く、成長指数が高い。まず自分の考え方を変えれば、望んでいるような変化が起こり始める。

 

〇ストレスの考え方

 最も重要なポイントは、「ストレスは場合によっては害になる」という認識を捨てる必要はないということ。本当の意味で重要なマインドセット・シフトは、ストレスについてもっとバランスの取れた考え方ができるようになること。そうすれば、ストレスに対する恐怖が減り、対処できる自信が湧いてくる。そして、ストレスを利用して、人生としっかり向き合うようになる。

 

〇自分の考え方に気付く

 自分がどんな行動をしているかに気付いたら、そのせいでどんな影響が生じているかに注目してみる。自分の健康状態や、周囲の人たちとの関係に、どんな影響が現われているだろう?

 

〇ストレス反応を味方にする

 「ストレスを感じるのは、心理的な欠点や弱さのせいであり直すべき」という考え方が生まれたのは「ストレス反応=全身全力の闘争・逃走反応」という間違った思い込みのせい。ストレス反応にはさまざまな種類があることを知っていれば、体に頻繁にストレス反応が起こる理由もストレス反応は欠点の印ではないこともきちんと理解できる。

 

〇価値観を思い出す

 価値観を思い出すことはストレスを力に変えるのに役立つ。ストレスが「自分の意思に反して身に降りかかってくるもの」から、「いちばん大切なことを再認識し、心に深くとめる機会」へ変化する。いちばん大切な価値観を思い出すためのアイテムをつくってみよう。

 

〇ストレスの認識

 ストレスを感じないようにしたところで問題は解決しない。ストレスを感じることにしっかり向き合って、それに意味を見出すことができれば、ストレスの原因だったものが力に変わり、むしろ心のよりどころになる。

 

〇人とつながる

 ストレスについて、大切な人たちとどんな風に話し合うかはとても重要。他の人の眼を通して自分の持っている力に気付くことがある。そう思って人と話し合えば、相手もまたあなたのおかげで自分の中に潜んでいる力に気付くことができる。「今こんなに大変な思いをしているのも、大事な目的があるからだ」と思い出すことができる。希望を見出すための唯一の方法は、逃げることではなく人と繋がること。

 身近な人が苦しんでいるときに、意識をどこに向けるかによって体に起こるストレス反応は違ってくる。相手を慰めたり、助けたりいたわったりすることに意識を集中するとで希望や繋がりを感じる。小さな行為によって、自分の体を勇気の出る状態にできる。 

 

〇ストレスを避けた代償

 人生を振り返り、ストレスの多かった日をすべて取り除いたら理想の人生になるかというとそうではないはず。ストレスが無くなったら、成長のきっかけとなった経験やもっとも誇りに思うチャレンジ、大きな影響を与えた人間関係もすべて消し去ることになる。しかも、不安の原因を避けていると、かえって恐怖感が強まり、先のことがますます不安でたまらなくなっていく。

 

〇自分のための目標からももっと大きな目標へ

 自分のための目標だけに向かって努力していると、頭が混乱したり、不安や怒りを感じたり、妬みや孤独に苛まれたりし、うつ病になる可能性が高まる。自分よりも大きなものに貢献しようと考えて動く人は、結果的に強力なネットワークを築くことになり、仲間と支え合うことができる。自分の能力を証明することよりも、周りの役に立つことを心がけている人のほうが、自分の能力を証明することばかりに熱心な人よりも、周囲から尊敬され好かれる。

 

〇ストレスが害になる場合(研究結果)

①自分はストレスに対して無力だと感じる。

②ストレスのせいで自分は孤立している。

③このストレスは無意味で、自分の意思に反している。

 

  ちょうどストレスの溜まっていた時期と重なったということもあり、タイトルのような本が読みたかったんですよね。精神論、あるべき論もさることながら、自分の価値観をあらためて考え、人と話し、何を成し遂げようとしているからストレスを感じているのかということを考えることで、気持ちは随分和らぐものです。誰もが思い当たるテーマだけに、自分なりの正しい理解を持っておきたいものですね。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書 スタンフォード シリーズ

スタンフォードのストレスを力に変える教科書 スタンフォード シリーズ

 

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