『猫を助ける仕事』(山本葉子、松村徹)
猫カフェ型開放シェルター、猫付きマンション、猫付きシェアハウス。毎年約10万頭の猫が殺処分されている現実を変えるための新たなビジネス。NPO法人東京キャットガーデンのビジネスモデルを紹介する内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇事業性×革新性
・支援金と支援物資を受ける仕組みを標準化。都内3カ所のシェルターで常時300頭近い保護猫を世話し、年間約700頭の譲渡を実現しながら、事業収支をバランス化。
・猫カフェ型開放シェルター、猫付きマンション、猫付きシェアハウスの仕組みを日本で初めて考案し普及に努める。
〇日本の猫事情
・日本で飼育されている猫は974万頭(犬は1870万頭)
・毎年10万頭が殺処分されている(犬は3万頭)
・行政の保護施設から飼い主へ譲渡される割合は14%(犬は53%)
・飼い猫の平均寿命:15歳(完全室内飼い16歳、家の外に出る猫13歳、屋外のみで生活している猫は4~8歳)
・メス猫は年に2~4回出産し、1回に4~8頭の子猫を産み、親子兄弟の間でも子供を作るため、オスメス二頭が1年後には20頭、2年後には80頭、3年後には2000頭以上に増える計算になる。従って、不妊去勢手術は必要。
〇ペット住宅事情
・アパートや賃貸マンションでは、ペット飼育可能物件は増えてきているが、数は非常に少なく、ペット飼育可でも犬はOKだが、猫はダメという物件がほとんど。
・飼い主側も買いたくても変えない阻害要因の一位は、住宅事情。
・大きな理由の一つは、猫の習性や飼育について誤解している大家さんが多いこと。
・一般的な猫カフェ(第一種動物取扱業登録)は、入場料や飲食代が収入。
猫は、民間ルートで受け入れる。
・保護猫カフェ(第二種動物取扱業登録)は、寄付で成り立っている。あくまで、飼い主を見つけて猫をもらってもらうことが目的。猫は民間ルートと行政の保護施設からの譲り受け。
〇猫付きマンション
・賃貸住宅の住人が一時的な預かりのボランティアとなって保護猫を飼育してくれる外部シェルターで、家賃や管理費などシェルターの維持費と餌代、トイレ砂など飼育に必要な消耗品は住人が負担する。
・一時的に預かる形で猫と暮らせる仕組みなので、飼育の心理的ハードルを下げることができる。
・一緒に暮らす猫は、住人が保護シェルターから選べる
・運営のポイント
①住人には預かった猫を責任もって世話する飼育主体になってもらうため、誰でもOKというわけではなく、飼い主の適性を審査する。
②住人が猫の所有権を譲り受けたり借り受けたりするのではなく、ボランティアとして一時的に預かる形をとる。したがって、住人との間に猫に関する金銭契約は生じない。
③住人が転居などで猫付きマンションを卒業する際、希望があれば再審査の上、猫を譲り受けられる。
④住人に対するアフターサービスとして、猫の飼育に関する教育や各種相談の機会を用意している。
〇猫付きシェアハウス
・猫付きマンションの仕組みをシェアハウスに応用したもの。
・一緒に暮らす猫は入居者が選ぶのではなく、最初からシェアハウスに猫が複数頭住んでいる。
・リビングルームやダイニングルームなどの共用部で複数の猫を飼育。住人が交替で世話をするので、猫の状態を翌日の担当者へ申し送る必要があり、毎日電子メールで東京キャットガーディアンと住人に情報を共有する。
・餌代やトイレ砂などの消耗品はシェアハウスの管理費に含まれている。物品は東京キャットガーディアンから提供する。これは、餌の銘柄を統一し、猫にとっての最適フードを提供するため。
上記のような取り組みの他、高齢者向けに万が一人間のほうが先に亡くなった場合でも猫の貰い手をあらかじめ決めておくサービスなどで高齢者向けの賃貸サービスなどもされているようです。
飼育されている犬と猫の数は、15歳未満の子供の数を超えている現在。新たなビジネスモデルを構築して社会に貢献されている意義ある取り組みだと思います。