企業家リーダーシップDay4の「代表的日本人」の一人として取り上げられた二宮尊徳。学校にある薪を背負って本を読む姿以外まったく予備知識なしでしたので、何か手がかりになる本はないかと探していたところ、本書に出会いました。二宮尊徳と経営を結び付けるという単なる歴史小説ではないところがお薦めポイント。サブタイトルに「財政再建、組織改革を断行できるリーダーの条件」とあるように、試練が多い中改革を進める姿に学びがある一冊です。
■二宮尊徳(1787~1856年)
現在の神奈川県小田原市生まれ。農民出身ながら小田原藩に才能を買われ家老服部家の財政再建を成功し、分領の下野国桜町領(栃木県真岡市)ほか、約600村の再生を手掛けた。
■ひとことまとめ
当たり前を継続する力と奉仕の精神。人を動かすのは人の行動。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇報徳仕法の3本柱
①分度を立てる(入るを量って、出ずるを制する)
②勤労する(一生懸命働く)
③推譲する(自利と他利。自分に、家族に、隣家に、地域に差し出す)
〇理
この世には天の理だけでなく人間の理が存在する。人間の理は時に天の理に背いてでもその主張を貫き通す。天の理に背いて人間の理を貫く時には、ある種の非情さが必要。
〇理論化
経験したことを理論化することに優れていた。無駄な本は読まない。自分の経験を他人や地域のために理論家するのに役立つ書物を狙い撃ちした。
〇積小為大の精神
同時に二つのことを進行する。治国の要道は入るを量って、出ずるを制すること。年月が掛かって赤字が積もったのならそれを崩すにも年月が掛かるのが当然。短兵急な改革は行わない。
〇五常講
①仁:(余裕金を)差し出す
②義:約束を守ってきちんと返済する
③礼:貸してくれたことに感謝する
④智:どうすれば早く返済できるか知恵を働かせて工夫する
⑤信:約束を守る
〇人を変えるのは人
何をやっているかではなく、誰がやっているか。内容ではなく、行う人間に対する印象や評価のほうがモチベーションの大きな力になる。「二宮先生のなさることなら、おっしゃることなら」という、”ならイズム”を生み出す。
〇改革は3つの壁への挑戦
①モノの壁(物理的な壁)
②しくみの壁(制度の壁)
③こころの壁(意識の壁)
改革の10年間のうち、最初の7年は、こころの壁への挑戦。
と、ここまで書くと、卓越した才能を発揮した秀才かという気もしますが、途中、反対派の猛攻に合い、半ばノイローゼになって1カ月間失踪。この間、成田山に籠り不動明王の画像と向き合うという経験をしています。人並みに苦しみ藁をもすがった姿には人間味が溢れ、そうした一面も人々の心を動かす一因になったのでしょう。逃げずに真実に向き合い、一つひとつ積み上げていく姿勢に学ぶべきものがあると思います。