MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

真説「陽明学」入門(林田明大)

『真説「陽明学」入門』(林田明大)(〇)

 経営道場Day3の課題図書である本書。陽明学に関する本は数多く出版されていますが、グロービス経営大学院の課題図書に取り上げられているだけあり、陽明学の解説だけではなく、王陽明の生涯や日本陽明学の系譜も含めて書かれた400ページ超の大作です。ここから何が学び取れるか、読み手の問題意識が問われる書籍と言っても良いと思います。

 

■ひとことまとめ

 対立して見えるものも実は一体であると捉えて心を鍛えること

 

(印象に残ったところ‥本書より)

陽明学とは

・心を陶冶する、鍛えることの大切さを主張した教え

・万物一体の考え方を理解し、心の中の葛藤をなくし、不動心を確立する教え

 

〇心の概念

 心とは、交換や反感、快や不快、喜びや苦しみなどの感情を感じ取るところ。陽明は、心が人生に決定的な役割を果たしていることに気付いた。いつもと違って見えるのは、目で見ているのではないから。心で見ているからである。心のあり方が変わったため、見ているものがいつもと違って見えてしまう。

 

心即理

・理とは道理のこと。心はすなわち万事万物の理であり、心と万事万物は一体である。心の内と外に対立はない。

・理というのはすべての心の中にあるもの。心がすなわち理である。

・心が私欲に覆われていない状態がすなわち天理。

・心というものは、その姿は空っぽなもので何もありませんが、霊妙な働きを持っていて、万事万物の理がすべてそこに備わっている。

・知識や情報を増やすことよりも、心の歪みをなくすことや我欲を減らす努力が心の中に生じる様々な葛藤をなくし、本来心に備わっている無限のパワーを回復して人間性を高める唯一の手段である。

・知識をどんなに増やしても、結局主体のないマニュアル人間であることを卒業することはできない。

・自己の本心が満足し納得した思想や規範ではない理に寄りかかって生きていては、いつしか無理が生じてくる。

 

知行合一

・少しでも思念が生じれば、それがすなわち行いである。心と身体は一つのものであり、思いと行動は一つのもの。相対立する2つのものによってできているように見えるこの世界が実は一つのものであるという世界観。

知行合一説は知的偏重の風潮に対して実践することを促す方便論ではない。知と行という「別々のものを合わせる」といっているのではなく、「もともと」分けられないと主張している。

・知というのは行いの初めである。行というのは知の完成である。これが一つの大きな循環をなす。

・思うとだけなら何を思っても問題としないというのは、法律的な次元では許されるかもしれない。とはいえ、悪を根から断ち切るには、邪な考えを持たない努力から始めるべき。悪は思いというレベルの芽の段階から摘み取るように努力すべき。

 

致良知

・良知とは、是非善悪を知る能力のこと。仁義礼智の4つの徳のこと。心の中に誰もが持っている物事の善いこと、悪いことを知る能力、仁義礼智の4つの徳を発揮して生きることが自立への迷いから覚醒への悟りへの道である。

・人が学習しなくてもできるのが良能であり、思慮しなくても分かるのが良知。

・仁義礼智の4つの徳は、自分の心を外からメッキして飾りたてたものではなく、もともと自分の心に持っているもの。ただ、これを人は自覚していないだけのこと。

・心の本質としての良知だけが、真実の存在。その良知の発現が致良知である。

 

〇四句教

・心の本体というものは、善悪を超越したもの

・善と悪が生じるのは、人間の意思が動くから

・善悪を識別する良心的作用は良知である

・善を行い悪を避けること、天理を存して人欲を去ることが各物である

 

 江戸時代~幕末にかけて多くの日本人に影響を与えた陽明学。そのエッセンスだけでも学び、現代にどう活かせるのか。もう少し深めていきたいという気持ちが湧いてくる一冊でした。繰り返して読むほど味わい深い内容だと思います。

「真説・陽明学」入門―黄金の国の人間学

「真説・陽明学」入門―黄金の国の人間学

 

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