『EQ』(ダニエル・ゴールマン)(〇)
経営道場Day2の課題図書。1996年に発表されベストセラーになった良書です。「心の知能指数」として、IQと対比して説明されるEQ。本書の流れを汲んだ書籍が多数発売されるなど、能力開発の考え方が広がり、世の中に大きなインパクトを与えた一冊です。長編であり、根気よく読むことが必要です。
■ひとことまとめ
自らの情動を知り、共感するコミュニケーションをとる心の知能指数
(印象に残ったところ‥本書より)
〇EQの5つの分野
①自分自身の情動を知る
自分の中にある感情を認識する能力
②感情を制御する
感情を適切な状態に制御しておく能力
③自分を動機づける
目標達成に向かって自分の気持ちを奮い立たせる能力
④他人の感情を認識する
共感もまた情動の自己認識の上に成り立つ能力
⑤人間関係をうまく処理する
人間関係を処理する能力は対部分が他人の感情をうまく受け止める技術
〇怒り
・不快な感情をコントロールする能力は、精神の幸福を得るカギ
・怒りにはいつも理由がある。ただし、正当な理由はめったにない。
・怒りを鎮める方法
①怒りの発端となった理由をもう一度問い直してみる
②さらなる怒りを喚起する要因のない環境に身を移し、アドレナリンがさめるまで待つ
〇不安
・不安をコントロールするステップ
①情動の自己認識+②思い込みを批判的に見直す→軽度の不安神経症を起こす神経の活動にブレーキがかけられる
〇希望
・希望は苦悩の闇にささやかな光を投げかける以上のもの
・希望を持ち続ける能力が高い人達に共通な特質
①自分自身に動機づけができる
②目的達成の方法を見つける才覚が自分にあると感じている
③困難な状況に陥っても事態がやがて好転するにちがいないと自分を元気づけられる
④目標に到達するために別の方法を考えたり達成不能のになった目標をのものを変更したりする柔軟性がある
⑤大きすぎる目標を処理可能な小さな目標に分割するセンスを持っている
〇フロー(ゾーン。最高の調子が出る状態)
・自分自身をフローの状態に持っていく能力は、EQの最高次の発現
・フローへの関門を越すには意識的な自律が必要。自分の得意分野で少し高めの目標に挑戦するのもフローを達成するひとつの方法。
〇共感
・感情音痴はEQの重大な欠損。思いやりのもとになるラポール(信頼関係)は、心の波長を合わせる共感から生まれる。
・本当の気持ちは、その人が「何を」言うかではなく、「どのように」言うかに表れる。感情のメッセージは9割以上が非言語手段によって伝えられる。
・人に共感することは、その人を思いやること。共感の反対は反感。共感的な姿勢は、倫理的価値判断を下す際に欠くことができない。倫理的なジレンマには潜在的に犠牲がつきまとうから。
〇感情の表出ルール
①感情の表出を最小限に抑える
②表現を誇張して自分の感情を大げさに訴える
③ある感情を別の感情で訴える(駆け引き)
・上流階級で要求される「慎み」は、つまるところ、心を動揺させるような感情を表に出して人間関係ががたついたりしないように注意するための方策
・情動の交流が上手な人間は、周囲の者たちをいい気分にさせるから、人気者で魅力的。他人の気持ちを慰める力を持っている人も社会に無くてはならない存在。
〇職場のEQ
・これからの企業を象徴するのは、人間関係を賢く処理する能力を備えた上司
・リーダーシップは他人を支配する技術ではなく、共通の目標に向かって力を発揮できるよう他人を説得する技術
・上手に批判する秘訣
①具体的に言う(問題がはっきり表れている場面をとらえて批判する)
②解決策を示す
③直接伝える
④気持ちを察する(共感する)
・グループEQ:グループが最大の能力を発揮するために単独で最も重要だった因子だったのは、個々のメンバー能力を最大に引き出すうえで大切な人間関係の調和をどこまで高められたかであった。
本書はとても大事な知識・考え方が詰まっています。ですが、読んだときは、内容の濃さとは裏腹にあまりのめり込めませんでした。それは、淡々と書かれていたからか、図表無しで450ページ超びっしりと書かれていたからか。。。そこを乗り越えると、この本の良さが味わえるなと思いました。