リーダーシップとメンタルヘルスのクラスの参考図書で、『ビジネススクールで教えるメンタルヘルスマネジメント入門』の実践編です。ラインケアの要点をまとめつつ、グロービスの監修らしく、メンタルヘルスを組織とリーダーシップという観点を意識してまとめられています。
■ひとことまとめ
真面目で仕事熱心な部下に注意を向ける。声掛け、観察が基本。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇うつ病の5つのタイプ
①メランコリー親和型うつ病(完璧に仕事をしないと自分を許せない)
②新型うつ病(うつや意欲低下の一方、気に入った仕事は張り切り、休日もいきいきしている)
③身体因性うつ病(身体の病気からくるうつ病)
④ドミノ型うつ病(職場の過重労働が原因)
〇マネジメントと医療の境目
メンタルヘルスの問題は第一義的には本人と家族の問題、かつプライベートな問題。管理職がしなければいけないことは、まずはしっかりイキイキした生産性の高い職場づくりに励むこと。
〇「仕事の要求度ーコントロール」モデル(カラセック)
・裁量権(大・小)×仕事量(多・少)の4象限に区分。
①仕事量多×裁量権大 →活性群
②仕事量多×裁量権小 →高ストレス群
③仕事量少×裁量権大 →低ストレス群
④仕事量少×裁量権小 →不活性群
評価の高い順は、①→②→③→④であることが多いが、うつ病の観点から見ると危険な順は、②→④→③→①。②の社員は、自分を顧みることなく熱心に職務をこなすので、会社から見ると優秀で好ましい。仕事のできる社員なのでケアも疎かになりがちだが、忠誠心や責任感の強い社員ほど過剰に反応し、メンタル不全に陥りやすい。③④に対してケアを行う傾向にあるが、②の社員には要注意。
〇職務充実
メンタルヘルス対応の基本として、疾病モデルである精神病対策と共に、職務充実を工場させる経営学的アプローチが必要。
①組織の目標やビジョンの共有度を高める
②個人としての職務充実を高める
③個人と職場の文化の適合度を高める
〇管理職がなすべきラインケアの行動ポイント
■見る
①サインを見る、②能力を見る、③人間関係を見る
■話す
④環境について声をかける、⑤やり方について声をかける、⑥プライベートについて声をかける
■聴く
⑦長時間労働のときに聴く、⑧異動後に聴く、⑨人事考課後に聴く
■対処する
⑩安全配慮をする、⑪健康相談を勧める、⑫本人の拒否や緊急性のある場合に対応する
〇部下の休職、職場復帰7つのポイント
①再発・再燃防止(復職時に注意。1年以内再発は4~5割)
②安全配慮(自傷等事故の防止)
③連携(本人・人事部・専門家・産業医・家族)
④心のハンデキャップ(病気・機能・人目を気にする)
⑤復職コスト(代替要員等のコスト)
⑥アセスメント(病名が同じでも程度の差がある)
⑦休職期間の意味(医学的な治療・健康回復、解雇権の履行猶予期間)
〇復職時のポイント
・復職前に「リワークの訓練」があると復帰が成功しやすい
・病名にとらわれず「なぜ」を考えて専門家のオピニオンを求める
・経済的支援を説明して、安心して治療できるようにする
・個人情報を守る
・意欲・仕事ができる能力、職場のサポート体制
・復帰プランは、本人の健康状態で柔軟に変える。短期・中期・長期で組み立てる
・休職・復帰前後が危険なので、就業規則で受診の規則をルール化しておく
・一人で頑張らずにソーシャルサポートを活用する
まとめでは記載できませんでしたが、事例多数でイメージが湧きやすい内容でした。
メンタルヘルス問題は、部下を持つ人ならだれでも、日常、気に留めておかないといけないことだと思います。働いていればストレスはあるので、そのストレスが極端に長期間続いていることに気づくか気づかないか。基本は、声掛けなのでしょう。コミュニケーションを基本に日常予防を行い、万が一、発症してしまったら専門家へ。
知識としてこの分野の基礎は押さえておきたいと思います。
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