『凡事を極める』(樋口武男)
本書は、日経新聞の私の履歴書を編集・加筆したもので、大和ハウス工業会長兼CEOである著者の生い立ちから現職までの履歴がまとめられています。
電話が鳴ったら1回でとる。元気よくあいさつする。約束を守る。「凡事」を極めことで、お客様の信頼が積み重なり、やがて非凡な成果につながる。「凡事徹底」「現場主義」「即断即決」で、業績不振の支店、債務超過寸前のグループ会社を立て直し、1兆円企業の組織改革と業績拡大を成し遂げた著者が語る、人と組織を強くする経営の極意とは。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇祖母の教え
世間に「おばあちゃん子は三文安い」などと言わせるように、祖母が叩き込んだ3カ条はそのままビジネス訓として今の私を律している。
①嘘とごまかしは絶対に許さない
②人に迷惑をかけるな
③闘ったら必ず勝て
〇大卒後入社した中小鉄鋼商社の大源にて
様々な種類の伝票を1枚ずつ先輩の女性社員に見せて「これは何ですか」「どういう意味があるんですか」と事細かに尋ね、すべて大学ノートに書き留めた。将来の起業に備え、何でも吸収してやろうと考えていた。先輩のセールストークを丸暗記した。
〇38歳のとき、赤字の福岡支店の立て直しにあたって
沈滞ムードの事務所で、ベルが何回鳴ってからようやく受話器をとり、しかもたらい回しにする様子を見て、明朗活発な女性社員3人を選び、社外からの電話を集中的に受けるように改めた。ベルが鳴ると1度で取り、元気よく答え、すぐ担当者につなぐ。不在なら代理の者が必ず用件を聞く。これだけで「気持ちいい」「元気が出る」と社外の評判がぐっと上がった。これを「凡事徹底」と呼ぶ。こうした普段の積み重ねが信用につながる。
〇経営の心得
■6つの判断基準
①お客さまにとって良いことか
②会社にとって良いことか
③社員にとって良いことか
④株主にとって良いことか
⑤社会にとって良いことか
⑥将来にわたって良いことか
■「リーダーの品質」四カ条
①公平公正
②無私
③ロマン
④使命感
■長たる者の「四つの力」
①先見力
②統率力
③判断力
④人間力
■「人間力」を磨く五訓
①自己益を忘れ、会社益を想え
②嫌な事実、悪い情報を包み隠さず報告せよ
③勇気をもって、意見具申せよ
④自分の仕事に非ずというなかれ、自分の仕事であるといって争え
⑤決定が下ったら従い、命令は直ちに実行せよ
叩き上げで積み上げてきた方は、実務の細部まで目が行き届いている。会社が大きくなり、ポジションが高くなっても、自ら積み上げた経験からその大切さが理解できている。著者は、リーダーとしての大きな器を持ち、現場の細事の熟知しその大切さを理解した、そんなリーダーだと感じました。