『凡事徹底』(鍵山秀三郎)
1994年に発行されたイエローハット創業者の著書です。「序のことば」(坂村真民)に、次のような言葉がありました。
不動の商魂、それは凡に徹することである。これさえ身につければ、お金は向こうからやってくる。これは商の常道であり、不変の哲理である。(中略)天下に名をなす人は、皆この凡から出、凡に徹しきっている。凡事徹底、この四字こそ、商人道の根幹であり、運をうかむこつである。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇先人たちのことば
・「人生は瑣事に苦しみ、瑣事を楽しまなければいけない」(芥川龍之介)
・「鄙事(ひじ)多能」(福沢諭吉)
普通の人が雑事として片づける細々としたこと、例えば、朝起きたら布団をたたむとか、雨戸をあけるとか、ちょっと家の前を掃くとか、そういった身辺の雑事に対していつも多能で、器用でなければいけない。
〇微差・僅差の積み重ね
・やれば誰にでも簡単に出来ることを徹底して、その中で差をつける。
・微差・僅差の2つをいつも追求し続けること。微差・僅差を大事にして積み重ねると大変大きな力を持ってくる。
⇒しかしやり慣れた方法が楽だから、だいたい瑣事はやろうとしない
〇「良樹細根」「根深ければ葉繁し」
根が広く深く張っていれば必ずいい木になるという意味。当然、根のほうが先で、上のほうは後で、根が張れば、自然に上はどんどん良くなっていく。わかりきったことなのに、普通は良樹のほうだけをやろうとする人が多い。
〇社風の影響
規定にしたがって仕事をしているということではない。何にしたがっているかというと、社風にしたがって仕事をしている。だから、良い社風になればいい仕事ができる。
〇気づき
袖の汚れやネクタイが曲がっているのが気になるのに、どうして会社の車や、会社の社屋やトイレが汚いのにきにならないのか。衿や袖やネクタイや心が汚れているのも、車や会社やトイレが汚れているのも一緒。それが連動して考えられるようでなければ気づく人間にはなれない。
〇自身の裏付け
自分自身に自信が持てなければ、口で言ったとしても相手には通じない。本当の誠意というものは、空気を通して相手に通じる。自分が本当に自信を持たずに言ったことは、同じ言葉であっても通じない。だから、私はまず自分のほうからきっちるすという考え方でやっている。
食事で出前を取ったら、必ずその器を洗って戻す。社員旅行で温泉などに行っても、必ず履物をきちんと揃える。宴会場の入り口でも、温泉の風呂場に行っても、入口のスリッパを揃えるというようなことをやっている。
〇誠実
心の痛みがわかるということ。小さいものでも疎かにしないということ。組織の中で一番困っている人に目を向けて、その人が良くなるように考える。そうすれば会社も良くなる。これが誠実ということではないかと思う。
瑣事に徹すればどんないいことがあるのだろう。もちろん、仕事をきっちりやるために必要だということは分かりますが、他にも良いことがないかと考えながら読んでみました。
読み終えて思ったことは、瑣事をしっかりとやり続けると・・・
①細かなことや変化にも気付く人間になるのではないか
②他人に対しても気遣える人間になるのではないか
③感謝の気持ちが高まるのではないか
(自分がやらなくても誰かが瑣事をやってくれているという感謝)
④責任感が高まるのではないか
本書の表紙にあるように「平凡を非凡に務める」力を養うことは人間力を高めることにつながる大切なことであると感じました。