第Ⅱ巻「ハンニバル戦記」は、一冊まるごとポエニ戦争(紀元前264年~紀元前146年)。ローマVSカルタゴ(フェニキア人の植民市で、現在のチュニジア共和国)の始まりから終わりまでが書かれています。カルタゴの英雄ハンニバルとローマの英雄スキピオの活躍の描写に惹きこまれる一冊です。冒頭の著者から読者に向けたメッセージの中にとても印象に残ったところがあります。
「日本で使われている高校生用の教科書によれば、この巻すべてを費やして書く内容は次の五行でしかない。
~イタリア半島を統一した後、さらに海外進出をくわだてたローマは、地中海の制海権と商権をにぎっていたフェニキア人の植民市カルタゴと死活の闘争を演じた。これをポエニ戦争という。カルタゴを滅ぼして西地中海の覇権をにぎったローマは、東方では、マケドニアやギリシア諸都市をつぎつぎに征服し、さらにシリア王国を破って小アジアを支配下に収めた。こうして地中海はローマの内海となった~
これが高校生ならば知らないと落第する。結果としての歴史である。これ以外の諸々は、プロセスであるがゆえに愉しみともなり考える材料も与えてくれるオトナのための歴史である」
(第Ⅱ巻のポイント‥本書より)
〇主な年表
・第一次ポエニ戦争(紀元前264~241年)
・第二次ポエニ戦争(紀元前218~201年)
紀元前216年:カンネ会戦、ローマ大敗
・第三次ポエニ戦争(紀元前149~146年)
紀元前146年:カルタゴを破壊、戦役終結
〇印象に残った言葉など
・天才とは、その人だけに見える新事実を見ることのできる人ではない。誰もが見ていながらも重要性に気付かなかった旧事実に気付く人のことである。
・リーダーとして成功する男の最重要条件として、彼がかもしだす雰囲気がイタリア語ではセレーノ、強いて日本語に訳せば「晴朗」にある。ブブリウス・コルネリウス・スキピオは、若いころからこれを完全に持っていた。
・ハンニバルとスキピオは、古代の名将五人をあげるとすれば、必ず入る二人である。現代に至るまでのすべての歴史で、優れた武将を十人あげよと言われても、二人とも確実に入るに違いない。歴史は数々の優れた武将をを産んできたが、同じ格の才能を持つ者同士が会戦で対決するのは、実にまれな例になる。そのまれな例が、ザマの戦場で実現しようとしていた。