『無私の日本人』(磯田道史)
「武士の家計簿」で有名になった歴史家磯田道史さんの著書です。
ほんとうに大きな人間というのは、世間的に偉くならずとも金を設けずとも、ほんの少しでもいい、濁ったものを清らかな法にかえる浄化の力を宿らせた人である。
本書は、無私の精神で生き抜いた3名の物語が綴られています。
(本書で紹介される3名)
〇穀田屋十三郎(1720~1777年)
武士にお金を貸し、利子で郷里を潤すという前代未聞の大事業を8人の同志とともに成し遂げ、貧困にあえぐ仙台藩吉岡宿を救った。
〇中根東里(1694~1765年)
荻生徂徠に学び、日本随一の儒者になるが、仕官せず、極貧生活を送る。万巻の書を読んだ末に掴んだ心理を平易に語り、庶民のこころを震わせた。
〇大田垣蓮月(1791~1875年)
絶世の美人だったが、不幸な結婚を経て出家。歌を詠み、焼き物を作って過ごした。内戦を早く終結させるよう西郷隆盛を諫める歌を送った。
(印象に残ったところ‥本書穀田屋十三郎より)
〇人の心は種である。一粒の種が全山を満開の桜の山に変えるように、心さえしっかりしていれば、驚くほどの軌跡も成し遂げられる。
〇変化というものは、まず誰かの頭の中に、ほんの小さくあらわれる。たいてい、それは、春に降った淡雪のごとく消えてゆくが、ときおり、それが驚くほど大きく育ち、全体を変えるまでに育つ。
〇不思議なもので、そこまで思い詰めて、無私に徹すると、道が開けてくるものらしい。
何とかしなければならないという思い、覚悟、支えてくれる仲間、偶然の出会い、様々な要件が重なって無私の心が大きな成果になる。無私の心であることは、共感を生み、人の心を動かす原動力になるということを感じさせてくれる一冊でした。
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