『世界全史』(宮崎正勝)
本書は、先史~現代までを「35の鍵」でまとめられており、歴史の大きな転換点をつかむのに適しています。また、随所に「歴史の読み方」というコラム的な数行の解説があるのですが、これも歴史の流れを補足するのによくまとまっており、世界史を大づかみするのに役立つ一冊でした。
(35の鍵‥本書より)
①農業と牧畜の出現
約1万年前、ユーラシアの大乾燥地帯で農業・牧畜が出現
②灌漑インフラの整備
前5000年以降、人口が集中する大農地が出現し、四大文明に繋がる
③都市と国家の出現
大河川流域で食糧自給できない都市が食糧確保の支配網を整備
④中華世界は天子がすべてを支配
天帝の委託を受けた天子が王朝を組織
⑤宗教・学問が前五~四世紀に出現
現在の主要な宗教・学問の原型が2500年前に出そろう
⑥ウマが帝国形成の後押しをした
馬を使った軍事技術により、西アジア→インド→中国→地中海の順に帝国が成立
⑦ユーラシアの一体化
⑧地中海の大帝国ローマの誕生
⑨世界史から離れていったインドの帝国
インド世界の中心がガンジス川流域に移動し、大乾燥地帯の世界史から分離
⑩遊牧民が中華世界に浸透
遊牧民が黄河中流域を占領した南北朝時代に中華世界は一気に拡張
⑪ユーラシア帝国の誕生
アラブ遊牧民が地中海・西アジア・中央アジアを統合(7~14世紀)
⑫大征服運動の後に大商圏が誕生
⑬11世紀に革新を果たした西欧
中世農業革命と十字軍で西欧は経済的・文明的に革新
⑭中華世界の弱体化で世界帝国が出現
モンゴル帝国がイスラーム帝国、中華帝国を統合し、スーパー帝国へ
⑮世界帝国の時代から並立時代へ
モンゴル帝国崩壊。ヨーロッパは宗教改革、大航海時代により大きな世界を出現
⑯大きな世界史への移行
ユーラシアと3つの大洋が5つの大陸を結ぶ新経済・政治システム
⑰1490年代は世界史の大転換期
1490年代に大西洋、1520年代に太平洋航路が開かれる
⑱16世紀、第二ヨーロッパの形成
メキシコ以南の新大陸で先住民社会が破壊される
⑲宗教戦争でできた主権国家
商人国家オランダ誕生。神聖ローマ帝国を無力化。
⑳蘭・英が世界のルールをつくった
蘭・英が大きな世界のシステムとルールをつくる
㉑資本主義と国民国家の成立
米国独立を契機に国民国家が広がる
㉒石炭・石油の時代へ
化石燃料にエネルギーを依存する異次元時代に突入
㉓鉄道・蒸気船の高速ネットワーク
都市を支える鉄道・蒸気船高速ネットワークが地球の姿を一新
㉔19世紀はヨーロッパの世紀
㉕欧州のアジア進出が加速
ヨーロッパのアジア進出、アジア諸地域の従属が急速に進む
㉖アメリカは西部開拓と鉄道で大国に
西部開拓と鉄道建設で急激に経済成長
㉗海の支配権が世界を制す
シーパワー強化。第一次大戦、太平洋戦争につながる。
㉘二つの大戦でヨーロッパが没落する
第一次大戦でヨーロッパ没落。第二次大戦で時代が転換。
㉙世界恐慌が第二次大戦を誘発
通貨切り下げ競争とブロック経済が第二次大戦を誘発
㉚第二次大戦は複雑な要因で起きていた
単純な民主主義とファシズム戦争ではない複雑な要因が絡み合う
㉛米ソ冷戦で第三勢力が台頭
アジア・アフリカの第三勢力の形成が進む
㉜世界経済が激変した1970年代
石油危機、ドルショック、情報革命などにより世界経済・政治が激変
㉝グローバル経済がもたらす経済の不安定化
㉞ヴァーチャル空間が世界経済を動かす
米国の金融帝国化の動きが強まる
㉟世界史の中心となり得る「太平洋」
中国の台頭。TPPなど太平洋の新経済秩序形成。
本書の転換点だけでもざっとこんなにたくさん。大枠をとらえるのも一苦労です。。。が、ポイントを押さえるだけでイメージがぐっと湧いてくるので、興味も掻き立てられます。特に、ある地域とある地域が結びつき、その文化や技術の伝承が現代に受け継がれていたりすると、面白さが格段に増しますね。