『「ハカる」力』(三谷宏治)
新しいビジネスモデルとは、新しいハカり方。情報があるれているからこそ、「ハカり方」が大切になっている時代。本書では、ハカる力を、①ボトムアップ、②トップダウン、③ヒトをハカる、④つくってハカる、⑤新しいハカり方を創る、という観点から解説されています。事例やケースも多数掲載されており、イメージが湧きやすい内容だと思います。
■ひとことまとめ
まずグラフ化して眺めること。ヒトは行動でハカる。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ハカる力とは
違ったものを対象に、違った方法で測定し、それらを組み合わせてインサイトを絞り出すための力
〇定量的メカニズムを見抜く(ハカる力の根源)
・定性的表現にとどまらず、定量的・具体的指標に落とす
・大事な要因(だけ)を見定める
・それらと目的(売上増やブランド向上等)との因果関係を確認する
〇基本は枠組みづくり。
・言いたいこととグラフをイメージ
・軸(何をハカるか)を決め
・目盛(どんな塊でまとめるか)を刻み
・いくつかのデータを組み合わせる
・グラフからインサイトを読み取る
〇トップダウン型(枠組みを先につくってからハカる)
「塊」(事実や意見)と「つながり」(関係)をつくること
・塊の大きさを明らかにする
・つながり方とその太さを明らかにする
〇ボトムアップ型(枠組みを後でつくり上げる)
何かを証明するためにハカるのではなく、とりあえずハカってみてから発見する
〇相関図が教えてくれること
・結果に対する原因の候補か否か
・原因だとしたらどれだけインパクトを与えているか
〇ヒトをハカる
心ではなく、行動をハカる。
・まずはなるべく細かい情報で見る。グラフ化して見えやすくすること。
⇒グラフの形、グラフのピーク、増減傾向
・コンセプトづくりに効くハカる(良品計画の事例より)
①消費者にコンセプト自体を求めず、その評価を求め、それを信じる
②コンセプトを提示するとき、言葉ではなくデザインや試作品で示す
③消費者のリアルな生活シーンを観察することからアイデアやコンセプトを得る
〇つくってハカる
・試作品でハカるに必要な2つのスタンス
①基準を思い切って下げる(ちゃっちゃとつくってハカる)
②使用者の行動をハカる(言葉による意見に頼らない)
・完成品でハカることが有効な場合
①不確実性が高すぎて、事前にハカり切れないとき
②完成品を作り上げる投資がそれほど大きくないとき
〇新しいハカり方をつくる
・ハップル宇宙望遠鏡:銀河系間の距離のハカり方
・レーザーイオン化法:たんぱく質を壊さずに質量を測定
・3D加速度センサー(Wiiリモコン、タニタ歩数計等):加速度・傾きを測定
・A9(検索・レコメンデーション機能):Amazonで何を買ったか、どれをクリックしたかをハカる
・ドップラー・レーダー:風雨のスピードをハカり、竜巻予測に活用
・グラミン銀行:借り手の返済能力を担保ではなく、仲間からの信頼でハカった
・バンクオブアメリカ:個人・中小企業主への地震からの再建貸付を、「手にたこがあること=懸命に働く意思」でハカった
・オークネット(中古車TVオークション):独自の品質評価基準と訓練された専門検査員により中古車の質をハカった
情報が溢れると、情報活用する人の、「情報の選択」、「情報の見方」が問われます。「ハカる力」はまさにその情報活用力を左右する力ですね。同じ情報に触れていてもハカり方一つで重要に思えたり、単なる風景の一つにすぎなかったり。本書にもありましたが、まずは、とりあえずハカってみて、グラフ化して眺めてみるという感じで慣れていくことが必要なんでしょうね。思考の固定化、凝り固まった頭を壊すのは、ハカり方のような気がします。
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