『一瞬で大切なことを伝える技術』(三谷宏治)
本書は、大切なことをきちんと伝え、会話・議論できるようになるためのエッセンス本。「重み」と「差」に着目した「重要思考」により、言いたいことをはっきりさせ、言いたいことを相手に伝え、相手の言いたいことを理解し、相手とちゃんと会話・議論するステップが書かれています。
■ひとことまとめ
「重み」と「差」を意識して、話す、聴く、尋ねる
(印象に残ったところ‥本書より)
〇会話・議論の問題
①しゃべっている話がまとまらない
⇒話し手が「伝えたいコト」の優先順位を整理しないまま、思いついた順に話すため、何が重要なのか分からない。
②ロジカルシンキングに沈む議論
⇒論的かどうかにこだわり過ぎて、逆に話したい中身が疎かになる
③決まらない会議
⇒決めなくてはいけないことや、それがなぜ大事かが全員に共有されていないので、思いつき発言の応酬になる。
〇かみ合う会話・議論をする3つの力
①言いたいことを相手に伝える力
②相手の言うことをちゃんと聴き取る力
③互いに質疑応答・議論をする力
〇ロジカルシンキングの超基本「言いたいことを塊と繋がりに分けてはっきりさせる」
・塊をはっきりさせる‥程度と範囲
・繋がりをはっきりさせる‥塊と固まりを繋ぐ原因という矢印
〇重要思考で考える
何か策を思いついたら、すぐにもう一度考える。「重み」はどれくらいか、より大事なことのために役立っているか。
・どの繋がりが一番強いか(一番大事な原因か)
・たいていヒトは「差がある」ところしか考えない。不思議なことに「大事かどうか」がいつも抜ける
・大事かどうかは付加価値やコストの「重み」でハカる
〇相手にちゃんと伝える
・一度に伝えることは1つに絞る
・1分で話すことを自分に課す。そうすれば伝えられるのは一番大事なことだけになる。
・段落ごとに区切って話す
・短く話す。言い直さない。15秒以内に90%の情報が忘れ去られ、それを超えて保持できるのは、数字であれば7つ、文字は6つ、単語は5つでしかない。
・NGワード(重要思考でない)
「~が1つある」「~ということもある」
〇無理解の壁
・理解力の壁:ヒトが相手を理解する能力には限界がある
⇒相手は何をどの程度すごい「差」と言っているのか
⇒相手は、本当は何を大事(「重み」)だと思っているのか
⇒そもそも「塊」と「つながり」は明確か
・思い込みの壁:ヒトは思い込みによって理解そのものを拒む
〇重要思考で聴く
・一番大事なことは何?
・それを実現するために大事なことは?
・それらに対して、オプション間での差はどれくらい?
〇アクティブ・リスニング
・受容(うなずき・アイコンタクト・あいづち)
・明確化(繰り返し)
・確認(言い換え・要約)
〇会議のムダ・暴走を防ぐための議論の5つのルール
①プレゼンターは簡潔な文章でまとめ、みなは終わりまで聴く
②質問する前にみなで3分考える
③勝手に話さない、大事なことからずらさない
④賛否を示し、「コメント」とかに逃げない
⑤決め方を決めておき、雰囲気で決めない
〇百聞不如一見 百見不如一考 百考不如一行
・百聞は一見に如かず‥言葉だけでなく現物を示す・現場に行くことで伝える
・百見は一考に如かず‥相手に即答させずに自分で考える時間を取ってあげる
・百考は一行に如かず‥相手に自分で発言させ、議論に参加させる
〇褒める極意
・相手が大事と思っているところで褒める
・他と比べて差をはっきりさせる
挿絵やチャート図、事例が豊富でとても理解しやすい内容です。頭ではわかっているつもりでもなかなか実践できないこの分野。せめて事前準備段階で重要思考や重みをハカるという点については整理しておかねばと、反省材料を頂きました。大事なことはシンプルだけど、そこにたどり着く思考過程で全力投球しているかどうか、自分自身の姿勢が問われるなと思います。